葬儀後の救急搬送

葬儀が終わり、納骨も済ませると、中野さんはケアハウスの部屋と実家の片付けを始めた。あまり長くは時間をかけられないので、テキパキと作業を進める。

しかし、片付けを始めてから3日後、あらかた片付けが終わった頃、中野さんは突如尿が出なくなり、腹部が膨張し始め、立っていることさえままならない状態に。中野さんは床に倒れたまま、携帯で救急車を呼んだ。

写真=iStock.com/ponsulak
※写真はイメージです

母親が入院していた救急病院に運ばれると、カテーテルを入れてもらい、尿は排出できた。だが、前立腺炎と肺炎を併発していることが分かり、発熱。中野さんが医師に、妻と母親のダブル介護生活の話をしたところ、「お母さんが亡くなり、蓄積された疲労が一気に出たのでしょう」と言われ、入院を勧められる。

しかし中野さんは、関東の病院に妻が期限付きで入院していることを説明。医師は紹介状を書いてくれた。

「身体だけではなく、精神的にもボロボロでした。『私はどうなってしまうのだろうか』と、不安でたまりませんでした……」

病院を出た中野さんは、発熱した身体で尿カテーテルを付けたまま、尿バッグをズボンのベルトに引っ掛け、コートで隠して新幹線に乗った。