因数分解して「算出式」をつくる

ここでB社の担当者がやってきました。Aさんは1通りの自己紹介をすませ、提案を始めます。反応はおおむね好評。しかし、ホッと一息ついていると担当者はズバッと切り込んできました。

「システムを導入すると、ウチは結局いくら儲かるの?」

ここが勝負どころ。「次回までに調べてきます」では、そこで会話が途切れてしまいます。Aさんは考えました。

まず、先ほど推定した従業員数を担当者に確認しよう。

「こういう推定をしてみたのですが合っていますか?」と算出式(図1)をノートに書いてみせると、担当者は驚いた様子でうなずきました。

続いて、コスト削減効果を導くために必要な因数を考えてみました。

経費精算システムを使用する人は、本社従業員の何%だろうか。Aさんは、以前に担当していた自動車ディーラーに導入したときのことを思い浮かべました。そのときの使用率は約8割。では、1人当たりの年間の労働時間数は?1日8時間、休日を除いた260日間働くとしたら、約2000時間。自社商品を導入したときの期待効果(工数削減率)はいくらだろう?

これまでの販売の経験を振り返ると、およそ2%。さらに社員の平均時間単価を約5000円として、それらを掛け合わせます(図2)。

すると、年間8000万円というコスト削減効果が導き出されました。この試算の肝は、「従業員数」「システム利用者率」「年間時間数(1人あたり)」「工数削減率」「平均時間単価」という項目を因数分解し、算出式をつくり出すことができるかです。