もちろん、この数字はあくまで概算です。取引先には、「誤差が±20%ほどあるかもしれませんが、おおよそこのくらいです」と伝えたほうがいいでしょう。

むしろ重要なのは、「算出式」を紙に書いて取引先に見せながら、プロセスを共有することです。数字が誤っているときは、正しい数字を教えてもらい、再度当てはめてみる。こうすることで、商談が滑らかに弾んでいくのです。

桁数の感覚を持つことによるメリットは3つあります。1つは、「点」と「点」を結ぶことによって、「○○よりは大きいが、××よりは小さい」という「土地勘」をつかむことができること。

Aさんならば、以前に担当した業界と今の業界に関連する数字を比較しながら、その相違点を検討してみればいい。従業員数、事業所数、業界規模……数値を頭にマッピングしてみましょう。これまでの経験をどのように活かせるかのヒントとなるはずです。

2つ目は、数字の桁数を頭の中にマッピングすることによって、見当違いの誤りを簡単にチェックできること。

また、マッピングすることによってなかなか覚えられない数字を記憶しやすくなります。これが3つ目のメリットです。たとえあなたが口下手でも、根拠のある数字を伝えれば取引先は興味を示し、会話は続くでしょう。

(構成=大塚常好 撮影=向井 渉)