事業者が無視できない「三種の神器」

健康食品に関する法規制を図表2にまとめた。主に商品パッケージと広告に関与しているが、広告に関する法規としては、医薬品医療機器等法(薬機法、旧薬事法)、景品表示法、健康増進法、特定商取引法、食品表示法がある。

この中でも重要なのは薬機法、景品表示法、健康増進法であり、健康食品法規の三種の神器と言っても良いほど、事業者にとっては無視できない法規である。この三つの法規は、健康食品の広告規制において互いに重なる部分も多く、景品表示法と健康増進法は相補的に取り締まりできるような枠組みとなっている。

違反広告が減らない二つの理由

なぜ、広告に関する法規制がいくつもあるにもかかわらず、健康食品の違反広告は減らないのだろうか。この理由について、事業者サイドと監視サイドの二つの視点からそれぞれ追ってみたいと思う。

まず事業者の立場から考察する。現行の法律では、景品表示法や薬機法などが絡んでいると話したが、「健康食品のメリットはどのように伝えるのか?」という疑問が浮かび上がる。

そもそも「健康食品」という名称は一般的に使われているが、法律で定義された名称ではなく、食品のうち、健康に良いものとして販売している製品の通称である。後述する機能性表示食品制度が導入されるまで、日本では健康食品のメリットを伝えたくても、ただの食品である以上、伝えられる内容は多くなかった。

商品を売るために最も重要な「性能(機能性)」をPRできなかったことは、多くの事業者が違反広告を出しやすくする結果につながった。

2015年に保健機能食品に機能性表示食品が追加され、機能性を表示することが広く解禁されたことで、日本の健康食品の枠組み自体が大きく変化した。しかし、いわゆる健康食品も引き続き数多く販売されており、機能性を本来表示できない多くの商品が機能性をうたっているケースも多い(食品と医薬品の区分については、図表3を参照されたい)。