ネット広告はなぜ信用できないのか
われわれ現代人は日々多くのネット情報に触れながら生活している。総務省の情報通信白書(令和4年度版)によると、全世代を通じたインターネットの一日あたり平均利用時間は176.8分と、一日の約3時間をネット閲覧に費やしている。
では、ネット情報をどれだけ信頼しているのか、というと、各メディアの信頼度の調査結果(*1)によると、インターネットの情報が信頼できると考えている人は全体のわずか28.2%にとどまり、テレビの60.3%や新聞の62.8%と比べて半分程度の信頼しか得られていないことが分かる。インターネットは触れる機会が多い一方で、消費者に信頼されるメディアとしては認識されていないことがうかがえる。
ネット広告に関するアンケート(*2)においても、「胡散臭い業種の広告ばかりの印象」「誇張の強い内容」といったネガティブな意見がみられ、多くの課題を抱えている。
本稿では、なぜネット広告は信用できないのか、というテーマの下、筆者の専門分野である健康食品の広告を中心に、「どのような広告が法律上問題となるのか」「なぜ悪質な広告が減らないのか?」といった疑問について取り上げていく。
*1 総務省 「令和3年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」
*2 一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会「2020年インターネット広告に関するユーザー意識調査(定性)」
違反広告がもっとも多い健康食品
まず、健康食品の広告には悪質なものが多いのか? という疑問には、割と簡単に“Yes”と答えることができる。その理由は、消費者庁が公表している景品表示法の措置命令に関する状況を見れば明らかである。
図表1に、景品表示法における措置命令の件数をまとめたが、平成29年から令和元年度の3年間にわたり、全分野の商品・サービスの広告違反件数(措置命令件数)に対して、約30%が健康食品(保健機能食品を含む)に関するものだ。これは、どの分野よりも多く、健康食品の広告に違反事例が多いことを端的に示す証左である。
なお、景品表示法は、広告における不当表示や不当景品から消費者の利益を保護することを目的とし、商品・サービスの品質、内容、価格等を偽って表示することを規制している。簡単に説明すると、広告や商品パッケージにおいて「実際のものよりもよく見せよう」「実際よりもお得に見せよう」といった表現を取り締まる法規である。