真面目な企業がいつまでも損をする悪循環
悪質な広告が減らないという話をすると、健康食品を販売している企業が全て悪質な広告をしているように思われるかもしれないが、実際にはそうではない。広告規制を守り、適切な表現を心がけながら販売している企業も数多く存在している。しかし、少数でも悪質な広告を出している事業者が悪目立ちするため、健康食品全体がグルーピングされ、信頼度がおとしめられているという側面がある。
また、一部の悪質な広告のために規制を強化すると、販売する全事業者が取り締りの対象となり、真面目にやろうとすればするほど広告が出しづらくなる。一方で、一定数の悪質な広告を出し続ける業者はその網をくぐり抜け、また規制が強化される、といった悪循環に陥ってしまう。
ネット広告の質を上げ、消費者の信頼を高めていくには、行政機関の取り締りだけでなく、不適切な広告が放置されない自浄作用を内包したエコシステムの構築も、重要な役割を担っているものと考える。
「健康食品」が健康を害するケースも
悪質な健康食品の広告により、消費者が損害を被るケースとしては、主に二つに集約される。一つ目が購入した健康食品を摂取しても(場合によっては多額を支払っても)健康に何ら変化が見られないケース、もう一つが、安全性が確認されていない製品を摂取し、健康に支障をきたすケースである。
例えば、健康食品に含まれるプエラリア・ミリフィカという成分があるが、この成分を摂取した消費者から消化器障害や皮膚障害、月経不順、不正出血などの健康被害が5年間(2012年4月〜2017年3月)で209件あったという報告がある(*3)。プエラリア・ミリフィカは、「豊胸効果がある」という触れ込みで広告され、主に若い女性をターゲットに販売されている。「豊胸効果がある」という文言は、薬機法や健康増進法で違反とされている表現だ。
このように、違反広告された製品には、安全性に問題があるものも含まれるため、健康食品の広告規制は厳しくせざるを得ない部分もある。違反広告がなければ本来手にすることがなかった製品を、「自分の容姿のため」「自分の健康のため」と摂取したことで、かえって健康被害に遭うということは、未然に防がれなければならない。
*3 独立行政法人国民生活センター「美容を目的とした「プエラリア・ミリフィカ」を含む健康食品-若い女性に危害が多発!安易な摂取は控えましょう」