次に、広告を監視する立場から、健康食品の違反広告が減らない理由を考察すると、商品数が多く、監視が行き届かないことが挙げられる。例えば、楽天市場の健康食品カテゴリーには10万を超える商品が登録されている(2022年9月3日現在)。ネット上にはショッピングモールが他にも多数存在し、企業HPやSNSなどのネット広告を合わせると全て把握するのは困難を極める。

また「限定した時間帯のみ表示される」「PCでは表示されない」「ターゲティングされた消費者のみに表示される」など多種多様な手段で広告が表示されるため、取り締まることが難しいことも挙げられるだろう。この監視サイドの課題は、健康食品に限らずあらゆる分野のネット広告にも当てはまる。

ネット広告を監視する3つの目

とはいえ、広告を監視するのは、何も行政機関に限ったものではない。各メディアによる広告審査や、消費者による行政機関への通報制度など、一億総監視社会とも言われる現代では、あらゆる目によってネット広告が見張られている(図表4参照)。

【図表】広告を監視する3つのグループ

また、冒頭で紹介した「メディアへの信頼度」と「広告の質」はおおむね一致しているようだ。テレビや新聞などの信頼されたメディアでは、広告審査が厳しく、景品表示法や薬機法などに違反した広告は許可されない。一方、インターネットでも広告審査はあるが、動画共有サイト、SNS、ニュース系キュレーションメディアなど、媒体ごとに審査の通りやすさは異なっている。

ネットメディアの広告ポリシーを見る限り、媒体によっては景品表示法や薬機法の規則まで細かくチェックされていないことが推察される。このように、行政機関だけでなく、多くの視点で監視できているかが広告の質に反映されている。

これからも規制強化は続いていく

行政機関としても、悪質なネット広告を看過するわけにはいかず、年々取り締りが強化される傾向にある。2016年には景品表示法の課徴金制度が導入され、違反広告をした事業者に対して、対象商品の売り上げの3%を納付することが定められた。2021年には薬機法にも課徴金制度が導入され、違反広告を出した事業者には4.5%の課徴金の納付が命じられることとなった。

また、消費者庁や都道府県ではインターネットにおける虚偽・誇大表示の監視を行っている。消費者庁が令和4年1〜3月に実施したネット監視では、健康食品等を販売している98事業者、117商品の広告に対して改善要請を行った。

さらに消費者庁は令和5年度の予算として、2億2000万円を「デジタル広告の監視業務」に計上し、デジタル広告の監視に関する増員を要求するなど、今後ネット広告に関する取り締りはますます厳しくなることが予想される。