「抗酸化サプリ」を飲んだほうが死亡リスク増

やがて「血液中のベータカロテンやビタミンEの濃度が高い人はがんになりにくい」という研究結果が示されました。

その結果を受けて、今度はさらに2つの大規模な臨床試験がおこなわれました。

ひとつはフィンランドの研究です。

肺がんリスクの高い3万人を無作為に4つのグループに分けました。

うち3つのグループにはそれぞれベータカロテン、ビタミンE、ベータカロテンとビタミンEの両方を与え、残り1つにはビタミンEもベータカロテンも含まれないプラセボ、つまりニセモノを与えました。

その結果は研究に参加した研究者らにとって予想外のものでした。

体に良いものを摂り続けたはずのグループのほうが、プラセボを与えたグループより肺がんを発症した人が多かったばかりか、肺がんと心臓病による合計死者数も多かったのです。

もうひとつの臨床試験のほうは、もっと悲惨な結果でした。

肺がんリスクの高い1万8000人を2つのグループに分けて、片方にはベータカロテンとビタミンAを与え、残り半分にはプラセボを与えました。

この研究は6年間続けるはずだったのですが、予定よりも早く打ち切ることになりました。

なぜなら抗酸化サプリを飲んだグループのほうがプラセボを飲んだグループより肺がんで死亡するリスクが46%と高く、そのほかの要因で亡くなるリスクも17%あることがわかったからです。

写真=iStock.com/ChamilleWhite
「ベータカロテンでがん予防」は実証されなかった(※写真はイメージです)