「サプリメントの多量摂取」は危険

この研究結果のような事実はあまり知られていません。

ベータカロテンは数多くの研究活動から「絶対、人に効果があるはずだ」と想定されていました。それをもとに大規模な臨床試験をしたものの、予想外の結果になったのです。

ほかの健康食品・サプリメントを、こうした大規模臨床試験にかけた場合、どんな悪い結果になるか、想像がつきません。

食品と健康との関係にはまだまだわからないことがたくさんあります。

ネズミを使って動物実験していても、実際のところ人体ではどうなのか、実際に確かめてみないと本当のところはわからないのです。

動物実験の概念
写真=iStock.com/JacobStudio
動物実験だけでは確かめられない(※写真はイメージです)

野菜や果物にはがん予防に効果がある成分が含まれている可能性はあります。

それが何なのか、単一成分なのか複合的な成分なのかなど、わからないことが多いのです。

とりあえずベータカロテンの教訓としては、「野菜や果物からとるよりも、なんらかの単一成分を抽出してサプリメントの形態で多量摂取すると危険性がある」ということでしょう。

結局、バランスのよい食事をとることが最大のがん予防なのかもしれません。

立ち止まって、冷静になって、「そんな魔法のごとく健康になれるものがあるのか」と考えることが大切です。

常識的には、いつも「毎日のバランスのとれた食生活、適度な運動、適度にストレスを発散できる趣味などの活動」の重要性を教えてくれるはずです。