近畿大学と連携してオリジナルの「交雑魚」を開発

【田中】これまで企図せずに訴求してこなかったおいしさについて、きちんとマーケティングの手法で伝えるということになると、強力な一手になりそうですね。

【相木】もちろん中身についても努力をしています。コールドチェーンを使って鮮度を保ったまま輸送したり、商品開発にも取り組んでいます。昨年、大きく販売数を伸ばした「ブリ」と「ヒラマサ」のハイブリッドである「ブリヒラ」は、近畿大学水産研究所が長年にわたる研究の末に生み出した完全オリジナルの交雑種です。当社が販売を担当することでここ数年で養殖量を増やし、昨年、当社の全店舗で販売できるまでになり、事業ベースに乗った世界で初めての取り組みとなりました。

近大の技術により生み出される人工種苗から育てるため、天然の資源を減らすことがなく、SDGsにも貢献する養殖魚でお客様からの人気も高い商品です。今後は、商品開発に積極的にさらに力を入れていく予定です。

収益性が高いスーパーからグロースの高いスーパーへ

【田中】商品のおいしさも見せ方も訴求するということですが、それ以外にはどんな打ち手を考えていますか?

【相木】一番やらなければいけないのはグロース、成長です。ベイシアは業界平均と比べると利益率は高い方だと思いますが、この数年は既存店のブラッシュアップのために出店ペースを抑えています。小売は出店をしないと売上高は伸びません。この3年で足元が非常に強くなりましたので、これからは出店を加速していきます。重点エリアを中心に少なくとも6~7店の出店をしたいと思っています。

そして、店舗の改装も継続して行っていきます。改装も成長のドライバーとして非常に確率の高い手法であり、売上を伸ばしている店舗のほとんどが直近に改装しています。これからは収益性の高いスーパーから、グロースも高い会社になっていきたいと思っています。

立教大学ビジネススクールの田中道昭教授

【田中】実際に店舗を拝見して近くにあったらいいなと感じましたので、ぜひ東京にも出店していただきたいと思います。さらに店舗の改装についてうかがいますが、改装して成長させるポイントをどこに置かれていますか?

【相木】インターネットビジネスと大きく異なるのは、店舗のレイアウトや棚割りはそう簡単に変えられないということです。設備は必ず老朽化するので、15年~20年が経つと冷蔵ショーケースの調子も悪くなりお客様の買い物スイッチが入りにくい空間になってしまいます。そこをリフレッシュします。設備を入れ替えるとともにレイアウトをお客様の嗜好しこうに合わせます。過去の購買データは分かるので、地域のお客様に合わせた商品を補充していきます。