「お客の買い物スイッチはどうすれば入るのか」
【田中】相木社長が大切にされている信条や言葉を教えてください。
【相木】今も実践していますがとにかく現場、お店とお客様に向き合うことです。現場に入って課題を一緒に解くことだけが経営者の仕事でないことはわかっています。自分なりの仮説を持って現場に赴き、現場で起きている課題を見つけ、それがどうすれば全社の大きなレバーになるのかをずっと見ています。頻繁に店舗に足を運びお客様と向き合い、商品が売れない理由、売れた理由を観察して、それを全体の戦略に反映させることを心がけています。
【田中】大きな仮説と日々の仮説から独自の仮説を設定して検証されているかと思います。現時点で検証に入っている仮説はありますか?
【相木】ベイシアはもともと価格優位性で業績を伸ばしてきました。加えて品揃え、買いやすさ、店舗の大きさなどが強みです。数年前からは「鮮度」と「おいしさ」にこだわっています。ただ、いろいろな調査を見ても両方ともお客様には伝わっていませんから、そこをうまく伝える必要があります。商品が全てを語るという見方がありますが、私はそれだけではなくお客様の買い物スイッチがどうしたら入るのか。行動心理学やマーケティングなども含めて、もう少し研究していきたいと思っています。
ベイシアは商品が良いから素のままでもお客様に伝わるはず、というアプローチだけではなくて、欲しいモノやお買い得なモノがどこにあるのかすぐ分かり、毎日の献立づくりのヒントになるような、お客さまの課題を解決できるマーケティングコミュニケーションを練っていきたいと思います。
積極的にプライベートブランドを開発する
【田中】6月にベイシアの店舗にうかがって思ったのは、競合他社と比較したときに品揃えが豊富で、クオリティに対する値段にも合理性があることです。一番驚いたのは積極的なプライベートブランド(PB)の開発です。もし競合同士が並んでいたら圧倒的な魅力があると感じました。しかし、その魅力がまだお客様には伝わってないということでしょうか。
【相木】そうですね。オリジナルのPBについても多くの商品をこだわって開発しています。しかしこちらも、売り場の中で埋もれている傾向があります。表面的なことでいうとパッケージやロゴの統一感が十分ではなかったり、他社と比べると質も良く価格優位性もあるにもかかわらず、その側面を前面に押し出してきませんでした。いろいろな面で控えめだと思っています。もう少し統一感を持って強く打ち出していくこと、中身のクオリティチェックも含めてもう一回PBを見直すプロジェクトを進めています。これが徹底できれば、お客様にベイシアのこだわりが伝わっていくと思います。