東日本を中心に1都14県に出店するスーパー「ベイシア」(群馬県前橋市)が楽天やヤフーへの出店を強化し、アマゾンへの出店も見据えている。なぜネット販売に力を入れているのか。7月に社長に就任した相木孝仁さんに、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授が聞いた――。(後編/全2回)

※本稿は、デジタルシフトタイムズの記事「変革を求められる小売業界。『スーパーを超えていく』ベイシアの小売DX戦略とは。」(9月15日公開)の一部を再編集したものです。

野菜などのeコマース
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年商3000億円を1兆円にするのが仕事

【田中】小売業界を数十年単位で見てみると、総合スーパーでも食料品はある程度堅調または横ばいであることに対して、非食料品は下がってきています。その一方で専門店が伸びています。専門性が最大のポイントの一つですよね。

【相木】そうですね。

【田中】このあたりで相木社長の野望をぜひおうかがいしたいと思います。密かな野望をどこまでお話しいただけるかは分かりませんが、ベイシアをどういうところまで成長させていく野望をお持ちでしょうか?

【相木】まだなにも成し遂げていないので、ビッグマウスになってはいけないと思いますが……。

【田中】ソフトバンクグループの孫さんも「日本に不足しているのはビッグマウスだ」とおっしゃっていますので、ぜひ相木社長にはビッグマウスを発揮していただければと思います。

【相木】私は、野望は口に出さないと絶対に叶わないと思っています。

【田中】そうですよね。思っていないことは実現しないし、言わないことも実現しない。ぜひ有言実行するつもりで、野望をお話しいただければと思います。

【相木】ベイシアは年商3,000億円で、パート・アルバイトを含めると20,000人近い雇用責任を持っています。これは凄いことだと思いますが、そういうスーパーは世の中にたくさんあるわけです。そんな中で、「数年かけて3,300億円を達成したい」ということならば、私は呼ばれていません。まず規模の話でいうと、これから5年、10年かけてこの業界は合従連衡が起きると思っています。そうすると5,000億や1兆円のプレイヤーにならないと、食品スーパーとして難しくなってくる。

ただ、全国チェーンのスーパーはどうしても地場に特化したスーパーに勝てなくなる傾向もありますので、スケールしたときにどうやってチェーンストアオペレーションを徹底しながらローカライズを組み合わせていくのか。このあたりが大きなポイントになると思っています。これが規模で見た側面ですね。

スーパーの基本は圧倒的なおいしさと鮮度の高さ

もう一つはやはり食品というお客様の口に入るもの、医療、健康につながる商品を取り扱っていますので、今のお求めやすい価格優位性や品揃えを維持しながら、圧倒的においしい、圧倒的に鮮度が高い状態をつくりたいと思っています。これが食品スーパーの基本の「き」だと思います。加えると、これからはお客様が食品を買うという行動や購買体験が変わっていくでしょう。すでにネットスーパーにより変わりつつありますので、しっかりキャッチアップし、フロントランナーになりたいと思っています。

現状はeコマースも十分ではありませんが、まずはネットスーパーを始めました。これからはお店でピックアップする時代になっていきますので、お客様のニーズの半歩先を行きながら、5年後にはベイシアが圧倒的に進んだ「メガSPA&DX小売」といった存在になりたいと考えています。

【田中】野望についてきちんとお答えいただいてすごく嬉しいです。

【相木】まだなにも成し遂げていないからいえることかもしれませんが(笑)。