数字を使って説得されると、聞き手も思わず、ならばやってみようと「実践する理由」が直感できるから不思議だ。ただ、人間には数字信奉があるため、話すほうも「数字を使ってごまかそうとするところもある」と鈴木氏はいう。
「特に人間は平均値とか、一番大きい数字に弱いところがあり、データとして示されると目を奪われてしまうところがあります。例えば、あるチェーンの一店舗あたりの平均日販が仮に60万円だったとき、ある店舗は70万円だったとします。
実はその店は立地に恵まれ、もっと高い業績をあげられる条件がそろっていたとすれば、平均値との比較は何の意味も持ちません。それでも、“うちは平均日販が70万円”と数字を聞かされると、業績がよいように思えてしまいます。
そこで、少しでもよく見せようと、数字をやたら並べようとする人がいます。でも、もっともらしい数字を並べたてられると聞き手も疲れてしまう。あまりにつじつまが合いすぎると逆におかしいと思われ、逆効果です」
数字には必ず「分母」になる情報がある。立地に恵まれた店舗の「平均日販70万円」という数字は、「チェーン全体の平均値」を分母にするとごまかしになってしまう。一方、「恵まれた立地」を分母に置いても意味を持つ数字を自分で見つければ、聞き手を引きつけることができる。
数字は使い方次第で毒にも薬にもなる。
説得力に自信を持てる“決めの数字”を自分なりに持っておくことだ。
※すべて雑誌掲載当時