ダイヤモンドを高温にすると「鉛筆の芯」になる
よく知られているようにC(炭素)でできていて、高温では、同じCの結晶体であるグラファイトという物質に変化してしまいます。グラファイトは鉛筆の芯に使われる物質で、ダイヤモンドと同じく炭素でできていますが、結晶構造が違います。鉛筆の芯に使われるくらいですから、とてもやわらかく、ドリルとして用をなさないのです。
このダイヤモンドの限界は、突破するのが困難です。今後、技術が進歩すればより深い掘削が可能になるかというと、それは難しいかもしれません。ダイヤモンドを使わない何か別の方法を考えるなど、発想の転換が必要です。
というわけで、人類はいまだに地殻を掘り抜いて、マントルに到達することができていません。
マントルに到達するには、大陸地殻ではなく、より薄い海洋地殻を掘ったほうが可能性が高いように思われます。日本でも現在、地球深部探査船「ちきゅう」を使って掘削調査が進み、人類史上初のマントルへの到達を目指しています。
地下深部にも「生命」は存在した
こうした掘削調査を進めていく中で、近年とても注目されていることがあります。それは、地中生物です。
従来、地下深部には生物はいないと考えられていました。生物といっても、もちろん知的生物ではなく、細菌、微生物の類いです。土壌の浅い部分に多くの微生物がいることは広く知られていますが、地中数キロメートルまで掘りすすむと、そこは太陽のエネルギーも届かず、高温高圧の世界です。そのような環境で、微生物とはいえ生息できるはずがない、というのが従来の常識だったのです。
ところが、最近の調査で、地下3キロほどの地中にもさまざまな微生物がいることがわかってきました。世界数百か所の鉱山や掘削孔から試料を採取して調べてみると、意外にも多くの微生物が見つかるのです。
こうした地中生物の研究は、この20年で急速に研究が進みつつあるものの、まだ始まったばかりです。まだまだサンプリングポイントは十分とはいえず、たまたまサンプリングした地点にたくさんの生物がいただけなのかもしれませんし、あるいは世界中いたるところに地中生物がいるのかもしれません。研究者の中には、地表よりももっとたくさんの生物がいるだろうという人もいます。