グループ専守防衛に国民がビビッてしまう理由

【木村】では、この橋下さんがおっしゃるような「グループ専守防衛」を組み込んだ改憲提案は、今の日本で通るのでしょうか。

【橋下】なかなか通らないでしょうね。まず政治家たちにグループ専守防衛という発想もないだろうし、これまで国民に対してエネルギーを込めて説明をしてこなかった。それは国民も、これまでのまやかしの説明ではなく、グループ専守防衛と真正面から言われると、ちょっとビビッてしまうんじゃないかな。

【木村】他の国の戦争に巻き込まれるのが嫌だという感覚が強いから?

【橋下】そうでしょうね。だけど、少なくともアメリカとの関係においてはグループ専守防衛論を真正面からやってもらいたい。僕は今政治家ではないですが、もし政治家だったら大阪都構想と同じくらいエネルギーを割いてやるくらいのテーマだと思います。でも今の政治家はやろうとしないね。

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集団的自衛権を最大限活用する議論は盛り上がらない

【木村】政治家というよりも、国民世論がまだ許していないということですよね。世論がイケイケドンドンであったなら、政治家だってできるはずで。

【橋下】そうそう。日本の国民は冷静なので、今のロシアによるウクライナ侵攻の状況があっても、グループ専守防衛として集団的自衛権をフルで使おうという議論は盛り上がらないと思う。大阪都構想のときも、最初は大阪府庁と大阪市役所をひとつにすることなんて誰も見向きもしていなかったんだけど、5、6年かけて賛否が拮抗するところまでになった。膨大な政治的エネルギーを費やしました。

もしグループ専守防衛論を国民に根付かせようと思うのであれば、大阪都構想に注入した政治エネルギーの何十倍ものエネルギーを注入しなければならないと思います。そうして最後に憲法改正を国民に問うことになる。政治はまだまだ努力が足りていませんよ。ただそこまでの真正面からの憲法改正にいかなくても、解釈でできる範囲はどこまでなのかを探っていくのも政治の役割だと思います。

【木村】国民世論に問うて、集団的自衛権なり、その限定容認なりを正面から認める憲法改正をしようとしても、見通しが厳しいということですよね。橋下さんのこの政治観はなかなか面白いですね。

【橋下】国会議員の3分の2の議席数も取れないと思う。国民投票にまでいかない。