1グラムの堆肥に12兆の微生物

土づくり職人の技園内には約6万株の牡丹と芍薬が植えられ、その規模は日本最大級、あるいは世界最大級ともいえるかもしれません。

健康で美しい花を咲かせるには、健康な土壌が欠かせないという考えのもと、関さんは土づくりのノウハウを、30年間かけて培ってきました。藁、落ち葉、雑草、藻類、そして馬糞などをブレンドして発酵させ、微生物の力で分解し、堆肥にしていきます。

関さんは、通常は1年程の熟成期間が必要になるところを、酵素の力を活用して分解を早める方法を、「酵素農法」として確立させました。実際に堆肥をつくっている過程も見せてもらいました。

一見すると、静かなひと塊の黒い土に見える熟成中の堆肥の山は、じつは多種多様な微生物たちが賑わいながら生きている世界なのです。

写真=iStock.com/Suphachai Panyacharoen
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「サラブレッドみほ」の最高品質のデータでは、1グラムの堆肥になんと12兆の微生物が含まれているそうです。微生物が元気に活動すると分解も進み、ウンコが土を介して循環する世界が生まれます。

いい土づくりは料理と似ている

では微生物が元気に活動する環境を作るにはどうすれば良いのでしょうか。

湯澤規子『ウンコの教室』(ちくまプリマ―新書)

さまざまな特性を持つ微生物たちが「共生」できるように、空気が好きな微生物には空気を、空気が嫌いな微生物には空気を与え過ぎないように、紫外線が苦手な微生物には遮光を、活動の補助剤としてマグネシウムなどのミネラルを加え、水の量、風通しにも注意すること。田んぼと畑では活躍する微生物が異なり、また作物によってもブレンドする配合の塩梅を変えなければならない、などなど。聞いているうちに、土づくりは料理のようだと思えてきました。

味噌を仕込んだり、漬物を漬けるように、または毎日ぬか床を混ぜるイメージが頭に浮かびます。そういえば、江戸時代の農書(農業の技術書)にも、田畑に肥料を入れることをまさに料理にたとえて「和え物を作るようなもので、材料がそれぞれの調味料とうまく調和しないと、味わいのよいものはできない」という説明がありました。

また、生きているものは「水」「油」「塩」「土」が結合したものであるということも江戸時代にはすでに記されていたことも思い出されます。