コロナ禍で脱大都会が世界的な流れに

脱大都会は世界的な流れでもある。コロナ死者数で世界最大のアメリカ。「グレートレジグネーション(大量離職)」という現象が鮮明になり、社会問題にもなっている。

大きな要因の一つが大都市から地方への移住とみられている。それを裏付けているのが国勢調査局の集計データだ。

全米56大都市(人口100万人超)を大都市圏としてくくり、コロナが猛威を振るった2020~21年(2020年7月1~2021年7月1日)を点検してみよう。大都市圏は1990年以降で初の人口減に見舞われた一方、非大都市圏は過去10年で最高の人口増加率を記録。人口減が特に大きかったのはニューヨーク(33万人)、ロサンゼルス(18万人)、サンフランシスコ(12万人)だった。

コロナ禍でテレワークへシフトし、自宅の狭さに音を上げたホワイトカラー労働者が続出したようだ。米イリノイ大学経済学部のグレッグ・ハワード准教授は米フォーチュン誌に対して「データを見る限り、脱大都会は長期的な流れになりそう。人は仕事がある場所に住むのではなく、住みたい場所に住むという時代がやって来る」とコメントしている。

ルーラル(田舎)起業家の時代が来ている

そんななか、起業の世界で面白い動きが出ている。その一端は米ベンチャー学会「USASBE(ユサスビー)」に見て取れる。

ルネサンスの本家本元イタリア。今年7月中旬、同国中部の小村ウルバニアがにわかに国際的なにぎわいを見せた。無理もない。USASBEの一行がウルバニアを訪れ、10日間にわたってさまざまな活動を行っていたからだ。テーマはずばり「ルーラル起業家」。

写真=筆者提供
イタリア中部にあるウルバニアの旧市街。米ベンチャー学会の一行が姿を現し始めた

ルーラル(田舎)という点でウルバニアは最適だ。人口はわずか7千人であり、周囲は豊かな自然で囲まれている。ショッピングモールやファミリーレストランは皆無だ。

USASBEは「全米中小企業・アントレプレナーシップ協会」の略称であり、世界最大のベンチャー学会だ(会員数は起業家や大学教員を中心におよそ千人)。有力起業家を多数生み出す米国生まれであるだけに、起業家教育で大きな影響力を持つ。

USASBEがルーラル起業家をテーマに会員向け研修プログラムを実施したのは初めてのこと。なぜルーラル起業家なのか。

私は個人的に同プログラムに参加したこともあり、USASBEのジュリエン・シールズ最高経営責任者(CEO)に直接疑問をぶつけてみた。すると次の答えが返ってきた。

「ルーラル起業家という言葉は昔からあるけれども、新たな意味合いを持つようになっている。アメリカでは大都市と比べて田舎は長らく取り残されてきた。これを変える決定打になり得るのがルーラル起業家。多くの人が注目し始めている」