妻を苦しめる“わしも族”の夫
データをみても、近年、定年後に、熟年離婚する夫婦が激増しています。この10年間ほどで、「同居期間が25年以上」の中高年夫婦の離婚は、2倍以上に増えているのです。その大半は、妻から離婚を切り出したケースです。つまり、「定年退職後の夫がずっと家にいる」ことに耐えられない妻が、それほどに増えているのです。
妻にとって、夫のいない昼間は、何十年もの間、自由な時間でした。自由にランチに出かけ、気の向くままに友だちと電話で話し、近所の人と井戸端会議を楽しむ、というように、のびのび暮らしていたのに、老後は、つねに夫の目がつきまとうようになります。そして、ちょっと外出しようとすると、夫から「どこに行くんだ?」「おれの昼飯はどうなるんだ?」「何時に帰ってくるんだ?」と矢継ぎ早に質問が飛んできます。
さらには、「わしも族」になる夫もいます。妻がどこかへ出かけようとすると、「“わしも”行く」と駄々をこねはじめるのです。そして、妻は、べたべたくっついてくる“濡れ落ち葉”のような夫に愛想が尽きるというわけです。還暦を過ぎていれば、とうに子育ては終わっているはず。
もはや、子供への責任はなく、家庭の“共同運営者”である必要もない、というわけで、熟年離婚を切り出す妻が増えることになるのです。
夫にとっての“自由な時間”は、妻にとっての“自由な時間の終わり”
というわけで、まずは、「老後も結婚生活を維持したい男性」のため、熟年離婚を避ける方法と心構えについて、お話ししていきましょう。
重ねていいますが、夫のリタイアは、夫にとっては“自由な時間の始まり”ですが、妻にとっては、“自由な時間の終わり”を意味します。妻にとって、定年後の夫は、自由を奪う「鎖」でしかないのです。
それは、これまで仲のよかった夫婦にもいえることで、夫が妻の自由を奪わなかったからこそ、これまでは仲よくいられたのです。人にとって、自由を失うことは、最大級のストレス源であり、それが妻の「主人在宅ストレス症候群」を招くことになるのです。
昭和の時代、「亭主、元気で留守がいい」というCMコピーがヒットしましたが、それが人口に 膾炙したのも、世の真理を突いていたからです。それは、令和の今も、変わりません。男性は、まずはそのことをよく理解しておきましょう。そもそも、人間関係には、「ほどよい距離感」が必要です。接近しすぎたヤマアラシが互いの体を傷つけるように、人間も近づきすぎると、心にトゲを刺し合うことになるのです。