元園長たちの“経歴隠し”が判明

「なんと『実は前の園では園長でした』という輝かしいキャリアを隠してしまう先生が複数いたんです(笑)。ふつうなら『マネジメントやっていました』ってアピールしますよね。我々も新園を立ち上げる時は、必ず新しい園長をアサインしますが、園長をやっていたと言ったらやらされるリスクがあるから、園長経験があっても、それをひた隠しにしていたんです。それぐらい園長は負担が大きいと敬遠されていた。

でも実は、園長でなければできないとされてきた仕事も、教えればできるものが多かったんです。園長の仕事も、一スタッフの仕事も、その多くを同列に扱って見直しをしたことで、だったら園長をやってもいいと思ってもらえるようになったのかなと思います」(巌さん)

非常時には子どもがいる人が優先的に帰れるシステムに

さらに非常時の「帰れるリスト」も作成した。

「非常時には、園長もスタッフも立場に関係なく、子どものいる人は優先的に帰れるリストをつくりました。それで子どものいない人から不満が出るかなと思ったら、意外にない。一般企業では、子どものいる人は定時に帰り、若い人は夜遅くまで働きがちですが、ここではふだんからみんなが同じように働いて、若い先生にも残業はさせません。平時に割を食っているという実態がないので、非常時は助けてあげたいと思ってもらえるようです」(巌さん)

写真提供=社会福祉法人風の森
基準の2倍の保育士を配置。「本当の保育ができるようになった」という声が出る。

若いうちは残業も厭わず働き、子どもができるなどライフスタイルの変化によって働き方を変える方法では、「長時間働ける人」に業務のしわ寄せがいって不公平感が生じる。野上さんたちは、長時間働ける若手にも同様に残業を禁じることで、不公平が出ないようになった。また若い先生たちは、豊富なプライベートの時間を使い、ダンスや役者、ベビーシッター、英会話講師など、副業に励む人も多く、それが保育の仕事にも活かされているという。