2022年の採用倍率は、新卒が7.4倍、中途は13倍
「やはり保育士になる人は、子どものために保育をしたいという気持ちが強い人が多いんです。でも、ぎりぎりの人数だと、大人主体の保育になったり、保育以外の業務に忙殺されたりして、保育が楽しめなくなってしまう人が多いようです。ですから、うちに中途で入った人からは『初めて保育を楽しめています』『子どもたちをもっと伸ばしてあげたい』など、仕事に対して意欲的な声がよく聞かれます」(美希さん)
その結果、産休・育休後の復職率は2年連続100%だ。
新卒は月給24万円+家賃補助8万2000円+ボーナスの待遇
保育業界は採用だけでなく、賃金が低いという問題も考えられるが、実態はどうなのだろうか。
「うちの月給は大卒で24万9000円、短大卒で24万2000円。これに東京都から8万2000円の家賃補助が出ます。またボーナスも年3カ月分。年度末にも業績によって別途ボーナスが出ることがありますし、定昇として毎年何千円かずつ上がっていきます。決して高い金額ではありませんが、一般企業に比べて安いこともないのではないでしょうか。
以前は給与もこれより5万円ぐらい少なく、家賃補助もありませんでしたが、だんだんと処遇改善されて、ようやくここまできました。大手企業の部長の給料まで上がることはありませんが、現場職の給与として見たときに、家賃補助込みとはいえ33万円が毎年数千円ずつ上がっていくことを考えると、給与が安いから敬遠する仕事でもないかなという気がします。頑張れば、ちゃんと安定した生活があって、子どもが育てられて、という給料はもらえるわけです」(巌さん)
これが、「正社員は残業が前提」という働き方が残っていると、やむなくパートに切り替えるなどで待遇がおのずと下がることになる。残業なし、休憩あり、有休がしっかりとれることが「正社員の当たり前」となっているからこそ、フルタイムで働き続けることができ、この待遇が維持されていく。
資格保有者の3分の2を占める「潜在保育士」
「働き方改革に真剣に取り組めば、保育士にとっても、法人にとっても、よい結果が待っている」と美希さんはいう。
「今、保育士登録をしていながら働いていない“潜在保育士”といわれる人が、資格保持者全体の3分の2もいます。3分の2もの保育士さんが、この業界では働けないと思っているわけです。この3分の2が戻ってきてくれれば、採用の課題がなくなる。業界全体としてはボトムアップしていけると思っています」
日本の未来をつくる大事な仕事だからこそ、保育業界の働き方の見直しは急務ではないかと、美希さんは力を込める。
「私たちは今後、障害児など特徴のある子の受け入れにもチャレンジしていきたいと考えています。待機児童問題の次の段階、一人ひとりの子どもにとっての保育の質を上げていく段階を力強く進めていきたいと思います」