「軽症」「中等症」「重症」の基準とは
――重症化というと、どのくらいの症状を表しているのでしょうか?
もともと医療上の定義と一般の定義では、「軽症」「中等症」「重症」の捉え方が大きく違うことが指摘されていました。医療者のいう新型コロナウイルス感染症における「軽症」の定義は、当事者には症状が重く感じられても入院治療が不要な状態です。「中等症」は肺炎などを起こして入院治療が必要な状態、「重症」はECMOや人工呼吸器をつける必要があって死亡する危険性もある状態です。
――だから一般の人が息が苦しくて喉が痛く、ひどくつらいのに「軽症」とされて驚かれているんですね。
そういうことです。今はさらに子供において、医療上の定義と一般の定義がより隔たっているようです。先日、新潟大学医学部小児科学教室のSNSアカウントが「症状がある子供の新型コロナのイメージと実際の比較」という図(図表2)を示し、今流行している「BA.5」の場合は中等症に該当するような肺炎が起こりにくく、入院が必要な子が定義上は軽症になっていることを指摘されていました。その通りだと思います。
――もともと新型コロナウイルス感染症は軽症でもつらいといわれていますが……。
実際の診療においても、発熱していても元気なのはヒトメタニューモウイルスやRSウイルス、手足口病に感染した子供です。新型コロナウイルスに感染した子供は、高熱が続いていたり、喉が痛かったり、倦怠感がひどかったりして、ぐったりしていることが多いのです。大人でも、実際に感染した人が何も食べられないほど喉が痛くなったりして、驚かれていますよね。軽症ならラクというわけでもありません。「新型コロナは、ただの風邪」と言う人がいますが、全然違います。こんなに多数の人がつらい症状に苦しみ、重症化したり亡くなったり、後遺症が残ったりする風邪はありません。