目立つ反対の声

安倍政権への評価は、国内で鋭く分岐している。海外から多くの弔意が寄せられても、それを故人がわが国の国益を重んじた結果とは短絡できない。

北朝鮮の拉致問題や核・ミサイルの脅威、中国との尖閣諸島をめぐる対立、ロシアに譲歩した北方領土問題など、外交上の重要な懸案は何一つ解決できなかった。

それに加えて、今回の銃撃事件の元凶である世界平和統一家庭連合(旧・世界基督教統一神霊協会)が、今も多くの人々に深刻な被害を与え続けており、しかも安倍氏が同教団と浅からぬ関係を持っていた事実が次第に明るみに出てくると、国民の間では「国葬」とすることに対して疑問視する声が大きくなっているのが現状だろう。

主な世論調査の結果を紹介すれば、以下の通りだ(表記は「賛成」「反対」で統一した)。

共同通信(7月31日発表)=賛成45.1%、反対53.3%。
日本経済新聞(8月1日発表)=賛成43%、反対47%。
JNN(8月7日発表)=賛成42%、反対45%。
読売新聞・NNN(8月8日発表)=賛成49%、反対46%。
NHK(8月8日発表)=賛成36%、反対50%。
時事通信(8月11日発表)=賛成30.5%、反対47.3%。
産経新聞・FNN(8月22日発表)=賛成40.8%、反対51.1%。
ANN(8月22日発表)=賛成34%、反対51%。

まさに国論二分、むしろ反対の声の方が多い調査結果が目につく。

法的根拠はあるのか

反対の理由の一つには「法的根拠がない」という意見がある。これをどう捉えるべきか。

政府側は、「内閣府設置法」第4条第3項第33号を根拠に挙げている。そこには確かに、内閣府の所掌事務として「国の儀式」に関する「事務」を取り扱うことが規定されている。

しかし、だからと言って、内閣だけの独断でどのような儀式でも行えると速断するのは、政治的にあまりにも乱暴だ。

「令和」を決めた慎重な手順

例えば「平成」からの改元の際に、大いに注目が集まった「令和」という元号について考えてみよう。

その法的根拠は「元号法」だ。

同法には「政令で定める」(第1項)との規定がある。普通なら政令は閣議決定だけで決められる。しかし、元号は長い伝統を持ち、国民にも幅広く受け入れられるべきであることから、閣議決定の前に、皇室への丁寧な説明を行い、有識者による懇談会を開催し、衆参両院議長の意見を聴くなどの慎重な手順を、あえて踏んでいる。

そうした手順を経ていたからこそ、多くの国民に素直に受け入れられたという経緯がある。

評価が分かれがちな政治指導者の国葬についても、本当に「故人に対する敬意と弔意を“国全体”として表す」つもりなら、当然ながらそれにふわさしい丁寧さが求められる。

現に内閣法制局は以前、吉國一郎長官が“国葬の場合には立法、行政、司法三権に及ぶ”との見解を示していた(「日本経済新聞」昭和50年[1975年]6月3日付夕刊、森暢平氏「社会学的皇室ウォッチング42」サンデー毎日 8月1日16時52分配信)。少なくとも、国民の代表機関である国会に対しては、誠実に説明を試みるのが良識的な手順だったはずだ。

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