脳の老化は前頭葉の機能低下から始まる

脳の老化は前頭葉から始まります。

早い人では中年期から前頭葉の萎縮がはっきりとわかります。カッとしやすいタイプの人は、じつは前頭葉の機能低下が原因かもしれません。

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前頭葉の機能が低下すると、まず感情の老化が表れます。若い世代ほどよく笑い、よく泣いたりしますが、中年を過ぎるころからそういった豊かな感情表現が消えてしまい、何となくいつもムッツリしていて表情の変化が乏しくなります。

そして感情の老化は感情コントロールも難しくします。

あらゆる感情の中でいちばん強くてコントロールが難しいのは怒りです。喜びや悲しみは「泣いたカラス」と同じですぐに消えますが、怒りはパワフルで、いちど爆発してしまうとなかなか収まりません。

人間が人間らしく生きられるのは前頭葉のおかげ

少し脳の説明を加えますと、人間の脳は簡単に言えば2重の層になっています。深いところに大脳辺縁系と呼ばれる部分があり、その上を大脳新皮質が包み込んでいます。

感情はこの深い場所にある辺縁系から生まれます。

辺縁系は動物の脳とも呼ばれますが、感情や本能(生存本能、食欲とか性欲)を生み出す脳で、これは動物にも共通します。生きるためには欠かせない脳です。

たとえば恐怖という感情はどんな動物にもあります。恐怖感が生まれるから動物は危険を察知すると身を守る行動を取ることができます。しかも素早くです。

人間も同じで、身の危険を感じたときにとっさに逃げ出します。ここであれこれ考えてしまう(判断したり分析したりする)より、とにかく逃げたほうが命を守れます。

辺縁系を覆っている新皮質は哺乳類のような高等動物に発達した脳です。もちろん人間の脳はあらゆる動物の中でいちばん巨大な新皮質を備えています。新皮質は人間の思考や知的な活動に関わるすべての機能を備えています。話す、読む、書く、計算する、思考する……その他一切の知的な活動です。

新皮質の中でもとくに発達しているのが前頭葉ですが、ここはとりわけ人間らしい脳になってきます。たとえば意欲や意志、想像力や創造性といった分野ですが、簡単にいえば巨大な大脳新皮質をコントロールしている脳ということになります。

オーケストラにたとえれば、新皮質のさまざまな部位に備わった機能が各楽器です。それを統一し、コントロールする指揮者が前頭葉ということになります。