感情の切り替えがきかなくなるのは老化現象

そして前頭葉は、感情コントロールの役割も受け持っています。下部の脳、辺縁系から突きあげてくるさまざまな感情を、理性でコントロールする役割です。

怒りの感情はそれをただ爆発させるだけなら弊害を生み出しますが、怒りそのものは動物にも人間にも必要です。ときに怒りが私たちにパワーを与えてくれることもあるし、現状改革のエネルギーを生み出すこともあるからです。

老化の話に戻しましょう。

といっても、ここまでの説明で暴走老人の正体も原因もほぼおわかりいただけたと思います。

暴走老人に限らず、老化現象のひとつに「頑固になる」とか「怒りっぽくなる」というのがあります。その原因も前頭葉の萎縮による感情コントロール力の低下と、前頭葉機能の低下で感情の切り替えがきかないということのふたつになってきます。

毎日を楽しみ尽くしていれば前頭葉は活性化する

でも、本書を読んでくださるみなさんには恐れるほどのこともありません。

前頭葉の老化防止について学び、意欲の高め方についても学べます。老後の人生、目的は毎日を楽しみ尽くすこと、それだけです。

和田秀樹『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックス)
和田秀樹『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックス)

自分の楽しみな時間が一日の中に散らばっていれば、感情発散は十分に行われています。不満や不機嫌を溜め込むことはありません。

人と会って話す、おしゃべりして楽しい時間を過ごすというのは、相手の話に共感したり自分の気持ちや考えを素直に伝えることが必要です。

「なるほど、そういう見方もあるか」とか「言われてみればその通りだな」といった経験は、柔軟な思考法を自然に育てていきます。初めての経験やドキドキ、ハラハラする世界を楽しむというのも、食わず嫌いを遠ざけ、「この歳になっても知らない世界ってまだまだあるんだな」という気持ちにさせてくれるでしょう。

すべて、頭を柔らかくしてくれる体験です。前頭葉を刺激して活性化してくれます。

高齢になるとどうしても「結果はもうわかっている」とか「こうでなければいけない」「こうなるはずだ」といったいままでの人生経験から導かれる答えや予測を正しいと思い込む傾向が強くなります。いわゆる「かくあるべし思考」ですが、この思考法に捕まってしまうと苦しい老い方を強いられます。

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