日本の中国に対する交渉力は大幅に低下する
現在、ドイツは米国に対して相応の交渉力を持っていますが、最大の理由はEU(欧州連合)が発足したからです。
ドイツ単体では米国への輸出依存度は相変わらず高い状態ですが、EU全体として見れば米国への依存度はそれほど高くありません。ドイツはフランスと並んでEUの盟主ですから、米国側はドイツに対して以前ほど強く出られなくなっています。
こうした現実を考えると、日本が輸出主導で経済を回すという従来の産業構造を維持した場合、中国に対する交渉力は今後、大幅に低下する可能性が高くなります。しかも、中国は米中分断に伴って、内需主導型経済に急速に舵を切っており、消費者の購買力が拡大し、それに伴って輸入も増えることが予想されています。
図表2は2018年時点における日米中の輸入品目(サービスは含まない)の構成比率を比較したものです。中国の輸入のうち最終製品が占める割合は21.4%となっており、残りの78.6%は素材や部品など製造業が必要とする品目です。
一方、米国は輸入の総額も大きいですが、その中で最終製品が占める割合は50%に迫る状況です。
モノというのは、最後の最後には最終製品(完成品)として消費されますから、世界で作られた製品の多くは、各国を経由して米国に向かっていることが分かります。一方、消費財など消費者が購入する最終製品の比率は約2割ですから、中国は今のところモノの最終消費地ではありません。
ところが中国が近い将来、消費を大幅に拡大させるとなると状況は大きく変わってきます。
中国が世界最大の「お客様」になる恐れ
中国が日本並みに消費を拡大させた場合、近い将来、輸入の3割程度を最終製品が占めることになると予想されます。現時点における中国のGDP予想値にこの比率を当てはめると、中国は2030年には何と150兆円もの最終製品を輸入する計算になります。
繰り返しになりますが、米国が強大な交渉力を維持しているのは、世界でもっとも多くの最終製品を輸入しているからです。輸入額が多くても、それを加工して再輸出したり、再輸出する目的でその製品を輸入している国は、結局、誰かに最終製品を売らなければ経済が成り立ちません。
一方、米国は最終製品を買うだけの立場ですから、すべての国にとって「お客様」となります。中国が米国以上に最終製品を輸入するようになるということは、中国が米国を超える購買力を持つことを意味しており、これは、国際的なモノやお金の流れを大きく変えるだけでなく、最終的には中国に強大な交渉力をもたらす結果となるのです。