既にウクライナにはHIMARSとMLRSが供与されているから、大型UAVを追加してもアメリカの軍事支援のスタンスが劇的に変わるわけではない。アメリカやフランスなど西側諸国は従来よりも強力な兵器をウクライナに供与しているが、それでロシアがNATOとの対立をエスカレートさせる気配はない。

バイデン政権がウクライナへの400億ドルの支援策の一環で供与を表明したUAV「グレーイーグル」4機があれば、ロシアの海上封鎖を打破できるだろう。

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無人航空機(UAV)。写真はイメージです。

この大型の無人固定翼機は強力な空対地ミサイル「ヘルファイアー」やGPS誘導爆弾を搭載可能で、時速約296キロで約25時間飛行できるため、オデーサ港とボスポラス海峡間を航行する船舶を護衛し、敵を攻撃し、航路を守る能力がある。

だが発表後まもなく、バイデン政権はウクライナへのグレーイーグル提供を撤回した。国防技術安全保障局が、グレーイーグルに搭載した最先端のレーダーや監視機器の技術がロシアの手に渡る可能性に懸念を示したからだ。

もう一つの懸念は、グレーイーグルの航続距離が長いことだろう。西側諸国の間には、ロシア領内を攻撃できるような武器をウクライナに与えないという暗黙のコンセンサスがある。戦域の拡大は誰も望んでいない。

このコンセンサスがある以上、ウクライナがロシア領を攻撃しないと確約しない限り、アメリカはグレーイーグルを供与できない。

陸海でロシア軍をたたく

しかしグレーイーグルがあれば、ウクライナの商船を守ることができる。またルーマニアから哨戒機「P-8ポセイドン」を飛ばし、ロシアのキロ型潜水艦を探知し、ターゲットの情報をウクライナ軍に伝えることもできる。こうした軍事情報の共有は、今でもやっていることだ。

グレーイーグルを使えば、強力で正確なGPS誘導爆弾で潜水艦を攻撃することができる。潜水艦を撃沈できなくとも、ダメージを与え、その場を離れさせることはできるから、商船隊は安全に航行できるだろう。

ウクライナ東部と南部の戦線でも、グレーイーグルは威力を発揮できる。これから供与されるはずの中距離防空ミサイルなどと併用すれば、今度こそウクライナ軍は「NATO並み」の戦力でロシア軍と対峙できる。