悩みを無理やり作り出してでも引き込んでいく
紀藤弁護士によると、特に悩みや迷いの中にいない人に対しても、カルトは悩みを作り出して、引き込んでいくこともあります。
たとえば、進路を決めた人に、「本当に、本当にそれでいいの?」と疑問を投げかけ、「もっと自分に合ったところはないか」と考えさせます。「今が、あなたの人生の分岐点ですよ」と言って、さらに深く悩ませたりもします。そうやって、人を悩みの中に誘い、その答えとして、カルトの価値観を教えていきます。
「だから、人から言われたことを、まじめに受け止めて考える人は、入りやすいんです」と紀藤弁護士。
「しかも、カルトはカルトの顔をして近づいてきたりはしません。たとえば、ボランティア団体を装って、「人の役に立ちたい」と思っている人に接近したりします。なので騙されたことにも気がつかないことが多いのです」
「お金、ウソ、秘密」3つの注意すべきサイン
そんなカルトから、身を守るにはどうしたらいいでしょうか。
紀藤弁護士は「それでも、よく注意していれば、カルトのサインが見えてくることがあります」と言います。いったい、どんなことに注意すればいいのでしょう。
「第一に、お金の話が出たら要注意です」と紀藤弁護士。途中で会費やセミナー代などを求められたら、これは警戒した方がいい、と言います。その代金が法外なものでなくても、疑ってみましょう。
「第二に、話が最初と違っていたり、何らかの嘘が含まれている場合も注意すべきです」
たとえば、宗教ではないセミナーのはずだったのに、教えている人は、実は宗教団体の教祖や幹部であることが分かった場合。カルトは、宗教であることを隠そうとして、別の形をとって、人を勧誘しようとすることがあります。オウムも、ヨガ教室や様々なサークルを隠れ蓑にして勧誘活動をしていました。
「第三に、『これは誰にも言っちゃいけない』などと秘密を守らせようとしている場合も気をつけてください」
若者に対しては、親や先生など、大人に言わないよう口止めする場合もあります。本当にいい教えなら、秘密にしたりせず、どんどん公表し、大人たちにも堂々と伝えればいいのです。それを秘密にしようとするのは、まだマインド・コントロールが十分完成していない段階で、大人に反対され、考え直して脱会してしまうことを恐れているのです。こういう場合は、むしろ大人に相談してみることにしましょう。