カルト性の高い宗教以外の集団もある
海外でも、カルトをめぐる多くの事件が報告されています。
1978年には、アメリカの新興宗教「人民寺院」が、南米のガイアナで集団自殺をし、子どもを含む900人を超える人が死亡しました。
1993年には、児童虐待と銃器不法所持の罪に問われたアメリカの新興宗教「ブランチ・ダビディアン」がテキサス州ウェイコの教団本部で捜査当局と銃撃戦となり、双方に死者が出るなどした挙げ句に籠城。その後FBI(連邦捜査局)が突入しましたが、この時に教祖のほか、やはり子どもを含む信者81人が死亡しました。
カルトは、宗教には限りません。過激派など政治的な集団やマルチ商法といった経済的な集団の中にも、カルト性の高いところがあります。
たとえば、1970年代の日本には、連合赤軍という左翼過激派の集団がありました。革命で世界を変革するという理想に燃えた若者たちが、山中で武装訓練をするうちに、リーダーが批判したメンバーを皆でなぶり殺しにするという、壮絶なリンチ殺人を繰り返しました。そこから逃れたメンバーが、宿泊施設を占拠し、人質をとって立て籠もり、銃を発砲して警察官ら3人を射殺する「浅間山荘事件」を起こしました。
これなども、閉鎖的な集団の中で、メンバーが歪んだ価値観に心を支配され、反社会的で命や人権をないがしろにする行動を繰り返したカルト的犯罪と言えます。
イスラム国とオウム真理教の共通点
最近では、シリアやイラクで一時期かなり大きな勢力を誇った、自称「イスラム国(IS)」があります。イスラム復古主義を標榜しながら「国家」樹立を宣言し、支配地域での徴税や一部の行政を行うなど、宗教的かつ政治的な組織です。インターネットを利用した巧みなプロパガンダを展開。中東だけでなく、ヨーロッパで生まれ育ったイスラム教徒の若者をも引き寄せました。
移民の二世や三世が、生まれ育った社会の中で“よそ者”として扱われて疎外感を抱いたり、シリアやイラクで空爆などで子どもが殺害されている映像を見て、イスラム同胞を救うための「聖戦」に参加しなければ、という使命感をかき立てられたりして、自ら飛び込んでいった姿には、オウム真理教に身を投じた人たちと重なるものがあります。