友達がカルトに取り込まれてしまったらどうすべきか
紀藤弁護士は、そのほか情報をしっかり集めることが大事だと言います。
「自称『イスラム国(IS)』はインターネットを利用したプロパガンダや友人知人を使った伝道活動で、ヨーロッパからも少なからぬ若者を集めましたが、そのうち、現地で行われているのはISが宣伝しているのとは違う、いったん行ったら戻ってこられない、女性は性奴隷にされる、という実態が情報として伝わるようになると、先細りになりました」
オウムについても、マスコミなどが頻繁に伝えている間は、アレフなどの後継団体に取り込まれる人は少なかったのに、情報が少なくなると信者が少し増えてきた、と紀藤弁護士は心配しています。それでも、今はインターネットで多くの情報が流れ、カルト団体からの脱会者が体験談をブログに掲載していたりします。そういう情報を活用することも大切です。
ただ、その一方で、ネットで事実を無視した陰謀論や差別的な政治思想を拡散する、新しいタイプのカルト的なグループもあるので、注意も必要です。
では、友達がカルトらしき団体に取り込まれてしまった、という場合はどうでしょう。
その時は、まず自分が近づかないこと。友達に誘われても、断りましょう。友達が心配だからといって、一緒についていったりするのは危険です。坂本一家殺人事件の実行犯である端本悟も友達を救い出そうとして早稲田大学在学中にオウムに近づき、「ミイラ取りがミイラになる」結果となってしまいました。
言ってあげるとすれば、カルトから離れて戻ってくれば、また友達になれる、ということです。大事な友達がもしカルトに入ってしまったら、どんなに口止めされても、まずは親や先生など、大人に相談しましょう。
ダライ・ラマが語った「カルトの見分け方」
私は以前、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ法王に、まっとうな宗教といかがわしいカルトの見分け方を聞いたことがあります。オウムは、チベット仏教の知識を取り入れ、麻原がダライ・ラマ法王などと一緒に撮った写真を宣伝に使うなどしていたからです。ダライ・ラマ法王はこう言いました。
「studyとlearnの違いです」
studyには「研究する」という意味もあります。研究するには、疑問を持ち、課題を見つけ、多角的に検証することが必要です。一方のlearnは、単語や表現を教わり、繰り返し練習して記憶する語学学習のように、知識を習い覚えて身につけることを言います。
「studyを許さず、learnばかりをさせるところは、気をつけなさい」
一人ひとりの心に湧いた疑問や異なる価値観を大切にしなければ、studyはできません。それをさせない人や組織からは距離を置いた方がよい、というのが、法王からの忠告です。