そこで私は、P&Gやキンバリークラークを目標に「いつかは世界一のメーカーになる」ことを掲げた。高い目標を目指すことでしか、会社は変わらないと考えたからだ。同時に私は、とにかく強い組織をつくりたいと思った。父というカリスマ経営者の下に一体化していた古い組織は崩壊の危機に瀕していた。今後、“魂の密着度”の高い、強固な一枚岩の組織をつくり上げるにはどうすればいいのか。

こうした思索の中から出来てきたのが、「共振の経営」という言葉であった。世界一を目指すという高い目標に、社員ひとりひとりの願望、欲望、思いが共振するような経営である。そして、共振の経営を現実のものにする手段として、SAPS経営という手法が誕生することになった。SAPSとは、以下の頭文字を並べたものである。

・スケジュール(行動予定の作成)
・アクション
(予定の実行)
・パフォーマンス
(効果の省察)
・スケジュール
(省察をベースにした次の行動予定の作成)

SAPS経営は、このサイクルを週単位で回していくマネジメント・スタイルである。私も含めたすべての社員が、「OGISM(A)表」によって年間、半期、四半期、月度で最も優先順位の高い課題を抽出し、「1P(ファースト・プライオリティ)ローリング表」で課題を解決するための行動計画を立てる。そしてSAPS週報によって、その行動を実際のスケジュールに30分単位で落とし込む。さらに、毎週末の週次SAPS会議で「今週できなかったこと」だけを報告し合い、次週の課題につなげていくのである。