自己認識と身体のズレが体調不良の原因になることも

近年、運動する機会が減っているため脳に運動刺激が入らず、使わない体の機能が衰えています。自転車も乗らずに放置しておけば日に日に錆びて使えなくなるし、家は人が住まなくなったとたん、汚れていって廃墟となるのと同じ、自然の摂理です。

たとえば、学生時代にテニス部に入っていたとします。当時は毎日練習をし、ボールとの距離感や打ち返す力かげんなどの情報を体から得て脳が判断しアクションに移せていました。20年ぶりにテニスをやろうとしたら、どうでしょうか。ボールを追いかけるときに足がもつれ、ラケットをから振りしてしまうのでは。

それは、筋力の低下もありますが、ボールを追いかける、打つという情報が脳の奥にしまわれていてすぐに判断がつかないからです。使わない機能に対しては感覚を失うため、体を上手に操縦できなくなります。しかし、一時的に乱れても、運動による刺激を与えれば改善されていきます。

このズレは、動作だけではありません。たとえば、やせているのに太っていると思い込み、過度なダイエットに走ってしまうのも自己認識と体のズレです。写真を撮るときに加工アプリを使っている人も要注意です。理想をつくりすぎて本来の顔と大きく差が出れば、脳内イメージとのズレが生まれ、メンタルを病んでしまうこともあります。

現代人は“万年運動不足”状態

私が関わった田畑さんという40代の女性も、強い不安感と運動不足で自己認知ができない時期がありました。

通院をやめていた数カ月の間に、身長158cmで39kgまで体重が落ちたにもかかわらず、太っているのかやせているのか鏡を見ても判断することができなかったそうです。めまいで体を思うように動かせず、運動刺激が脳に入らなかったことで、正確に自分のことを見ることができなかったのでしょう。

現代人は万年運動不足状態です。電車や車など便利な移動手段があるため、長距離を歩くことがなくなりました。

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駅や商業施設にはエスカレーターやエレベーターが設置され、階段の上り下りをすることも減りましたね。インターネットの発展で、わざわざ出かけなくても買い物ができ、仕事の商談もできる。コロナ禍で、ITインフラが急速に整備され、家にいながらほとんどのことができてしまう時代になりました。

和式トイレがなくなったことも、足腰が弱くなった原因のひとつだと私は考えています。深くしゃがみ込む動作は、フルスクワットと同じ。昔は1日2~4回、誰もがスクワットをしていたことになります。掃除もボタンひとつでお掃除ロボットがしてくれるので、ぞうきんがけやほうきで掃く作業も減りました。

昭和の時代にはあった日常の動作が減った分、必然的に運動不足になり、身体的要素から不調に陥る人が増加しています。きちんと生活できる体をつくるには、“適度に体を動かす”ことが不可欠な時代なのです。