甘いものを食べると一時的に脳が幸福を感じるため、また食べたいとつい手を出してしまいます。スマホでSNSや動画を見るのが楽しくて夜ふかししたり、寄りかかって立つと体がラクで片足重心がクセになっていたりと、正しいことよりもラクな不健康習慣を選んでしまいがちなのが人間なのです。

不調は誰のせいでもなく、自分自身がつくり上げているもの。まずはそれを知るだけでも大きな一歩なのです。

しかし、がっかりする必要はありません。不調をつくったのがあなたであれば、調子がいい状態も自分自身でつくることができるのです。意識的にいい情報・刺激を選び、脳に取り込めばいいのです。ただし、急に変えることはできません。時間をかけて積み重ねてきたことを一夜でひっくり返すことができたら、それは奇跡。繰り返し取り込み、体にしみ込ませていくことが大切です。

日々の運動不足が招く“不調スパイラル”

不調を招く要素は身体的、心理的、社会的要素があることをお話ししましたが、何が不調のきっかけになるかは、そのときどきで変わります。

当院を訪れるクライアントさんの多くは、運動不足から思うように体を動かせなくなっています。その結果、少しの段差でつまずいてひざや腰を痛めるなど、日常生活のちょっとしたことがきっかけで不調に陥る方もいます。これは、身体的要素が不調の入り口であるケースです。

自宅で膝の痛みに苦しんでいる人
写真=iStock.com/Liudmila Chernetska
※写真はイメージです

痛みがあると外出することがおっくうになり、さらに動かなくなって筋力が落ちていきます。すると、日常動作である立つ、歩くことさえも疲労感を覚え、ますます家に引きこもるようになり、不調のスパイラルに陥ります。

さらに、他者とのコミュニケーションが減り、孤立感を抱くようになります。ご高齢の方の場合は、会話がなくなるので聴覚が衰えていくことも。自分はダメな人間だと否定し、さらに不安も募り、うつ病など心の病を発症することにもなりかねません。

このように、入り口は運動不足という身体的要素ですが、社会的、心理的要素も付随していき、不調のループから抜け出せなくなっていくのです。ここまでくると、ひざや腰の痛みに対する対症療法だけでは根本改善にならないため、その方の置かれた状況(社会的要素)、精神面(心理的要素)や体の状態(身体的要素)など、それぞれからアプローチすることが必要になります。