中国が台湾に軍事侵攻した場合、現実にはどうなるのか。元在沖縄米軍海兵隊政務外交部次長で政治学者のロバート・D・エルドリッヂさんは「中国の台湾への軍事侵攻は成功するだろう。このため重要なことは、日米欧が『台湾の侵略は絶対に許さない』という意志を示すことだ。だが、今の岸田政権ではあまりに心もとない」という。評論家の石平さんとの共著『これはもう第三次世界大戦どうする日本』(ワニブックス)より、2人の対談を紹介する――。(第2回)
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中国による台湾侵攻はもう止められない

【エル】ウクライナ戦争が起きたことによって台湾侵攻が早まるのか遅くなるのかはわかりませんが、中国が戦術を見直していることは間違いありません。

なぜウクライナにおけるロシアの作戦がうまくいってないのか。あるいは世界各国の反応はどうか、どのような制裁措置にでたのかでないのか。そして台湾と一番関係する周辺国がウクライナの情勢に対してどう動くか、日本がどう対処しているのか。非常に細かく分析していると思います。

ただし、全体の流れとしては、中国の台湾侵攻は止められないでしょう。政治的・外交的にタイムラインがありますが、中国の立場に立つなら、宇宙戦が優位なうちに、日米台が一体になる前に侵攻したいはずです。

ウクライナの事情が完全に台湾に当てはまらないのは、繰り返しますが台湾が「国」ではないからです。加えてNATOのような組織がアジアにはない。

【石平】そこです、クワッドも軍事同盟ではないですから。

中国への輸入依存度が高い日本、アメリカ、ドイツ

【エル】だいたい中国はアジア版NATOをつくることを許しません。中国がクワッドを批判していたのはそういう理由からです。

私は、中国は経済制裁に強いと見ています。これには少なくとも2つ理由があります。

1つはアメリカの経済界や政界がものすごく中国に進出していることです。

日本政府の内閣府が公表した「世界経済の潮流 2021年」には日本とアメリカ、ドイツ3カ国の対中依存度の異常な高さを示すデータが載っており、参考になります。2019年におけるアメリカの各国輸入額に占める中国の割合は18.1%と2割近くもあり、しかも10年前の18.5%とほとんど変わっていません。また、輸入依存度が5割以上を占める「集中的供給材」は、590品目、全体のシェアは11.9%と非常に高いです。

中国との貿易戦争を仕掛けているアメリカでさえこの数字ですから、依存度の高い日本は当然それ以上です。輸入品目全体では23.3%、集中的供給材にいたっては1133品目(シェア23%)と、アメリカの倍近くもある。

ちなみにドイツは、全体で8.5%、集中的供給材では250品目(シェア5%)と比較的少ないのですが、ドイツは対中国貿易では輸出がメインだということを考慮したとしても、この数字です。