物流を握っている中国への制裁はリスクが高い

【石平】確かに中国税関総署が今年の1月に発表した貿易統計によると、2021年の中国の対米貿易総額は7556億ドル(約86兆円)と過去最大になり、輸出入ともに前年より3割増えて、むしろ相互依存が強まっています。

【エル】中国進出企業などが加入する「中国米国商会」が3月8日に発表した、中国ビジネス環境調査レポートによると、中国での今後の事業展開について、2022年に中国における「投資を拡大する」と回答した企業は66%にも上ります。この期に及んでです。

半面、「生産・調達の中国からの移転を検討または開始している」企業は14%(前年は15%)にすぎず、「今後の中国市場の成長見通しについて楽観視している」との回答は64%もあります。

さらに国際貿易に欠かせない物流のデータを見ても中国が他を圧倒しています。

たとえば、2020年のコンテナ貨物量上位10港のうち、1位上海、3位寧波、4位深圳などと7港が中国で、世界シェアの24.8%を占めています。アメリカは7.1%、日本は3.5%と比較にならない(「CONTAINERISATION INTERNATIONALYEARBOOK」より)。

つまり中国を制裁すると自分たちに制裁しているような状況になってしまいます。確かに中国共産党の幹部のなかに嫌がる人がいたとしても、それが習近平主席の国家戦略を変えるほどの影響を持つかは不明です。

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岸田政権では中国への抑止力が弱い

【エル】したがって、われわれ西側社会は、起きたあとを考えるのではなく、起きる前に中国に台湾侵攻をしないよう促す必要があります。つまり抑止力を示さなければなりません。

抑止力は装備品だけではなく、体制そのものなのです。いかに日本が同盟国や準同盟国、あるいは友好関係にある国々と連携できるかがカギを握ります。こうしたことへの種まきは、有事になって始めるものではなく、平時から積み重ねていかなければならないことです。

しかし今の岸田政権ではそれが弱い。

1つはリン外相を選んだこと(笑)。林芳正はやしよしまさ外相が外相就任とともに辞任した「日中友好議員連盟」の会長職は親子2代にわたって務めていたことは周知の事実です。

父親の義郎氏は1969年から2003年まで衆議院議員を務め、大蔵大臣の時期(1992~1993)に、中国へのODAは飛躍的に増大していました。ODAは外務省経由で配分されますが、それを承認するのは大蔵省(現在の財務省)です。時あたかも、天安門事件直後で中国が世界中からバッシングを受けていた最中のことです。