無能を嫌悪するのは「生物学的に正しい」

生物学的には、有能さは「適応度」と呼ばれる。環境変化に適応して生き残り、繁殖に成功する統計的な期待値を表したものだ。

女性にとっては、無能さに性的な嫌悪感を覚えるほうが、有能さに魅了されることよりずっと重要だ。有能さには多くのものが必要とされる。何千もの遺伝子と何百回もの適応、何十もの器官、何百万ものニューロンが驚くほど複雑に組み合わさって、持続的な適応行動をつくりだす。

しかし、オスが動物として無能になる方法は無限大だ。胎内で胚盤胞のまま自然に消えてしまうことから、ライバルとの競争で負けることまで、生存戦略が失敗する可能性はどこにでもある。

弱点を減らすのが「モテ」への道

有能さは多くの場合、大半の女性を性的に魅了するが、無能さはつねに、すべての女性に嫌悪感を抱かせる。

ジェフリー・ミラー、タッカー・マックス著、橘玲監訳『モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれた』(SBクリエイティブ)

どんな文化でも無能さ──非力、無職、性的不能、危機管理能力の欠如、父性の欠如など──に惹かれる女性はいない。実際、多くの種においてメスは、よいオスに近づくよりも悪いオスを避けることを選択する場合が多い。そういうわけで、たいていの女性は、サイコパスやナルシシスト、気味の悪い男、変人、ストーカー、負け犬、まぬけ野郎に、直感的に強い性的嫌悪を抱くのだ。

やさしくて心の広い彼氏とつき合うと、数カ月の間、自分の身体を守ってもらえるかもしれない。しかし猟奇的で暴力的な男とつき合うと、一生残る障害を負ったり、一瞬のうちに死を迎えることもある。

こうして、多くの女性の選択はリスク回避的なものとなる。「ミスター不正解」による潜在的損失は、「ミスター大正解」からの潜在的利益に勝る。

つまり、すでにうまくやれている分野で完璧を目指すのではなく、弱点を見つけてそれを修復することが強みにつながるのだ。