「試合に出てなんぼ。努力次第で主役になれる」

乱暴な言い方になるが、大阪桐蔭などの強豪校はチームが日本一になれるかもしれないが、試合に出られず、部活生活に悔いを残す選手も少なくないだろう。

だが、なぎさなら違う。主力になって試合に出られる可能性が高く、大きなやりがいを感じるはずだ。

「それでええんです。試合に出てなんぼ。努力次第で主役になれる。それがうちのうたい文句なんです」

磯岡は部員と自分に言い聞かせるようにうなずく。自校のグラウンドで試合ができなくて、電車賃を払って遠征しても、試合に出られなくて声だけ出して帰る、では忍びない。

高校野球、部活は何のためにやるのか。ただ、勝つためだけではなくて、経験を積んで課題を見つけて意欲を育てて人生に生かすものを学ぶため。公立の良さはそこにある、と磯岡は語気を強める。

撮影=清水岳志
打撃練習する部員たち

「使命感を持ってやってます」

受け入れるしかない環境、与えられた条件の下、ひとつずつ工夫して部員を増やし、強くなるために練習するしかない。

2年前に丸刈りをやめた。「部員が入らないからやめましょう」と当時のキャプテンが言ってきたという。学校説明会で「坊主じゃなければ子供も入りやすい」という父兄もいる。確かに、なくてもいいハードルは取っ払ってもいい時代になった。

「新1年生が何人入るか祈るだけです。どんな子でもいいです、育てるんで」

磯岡が最後にそう言った。

大阪春季大会は4対13で初戦敗退だったが、1年生が4人(他にマネジャー3人)入って、夏に向けてスタートしている。

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