苦肉の策? 画期的? 「コース別の部員募集」

しかし、1、2年生合わせて9人いないとこの秋は合同チームになりかねない。それを何としても避けたい磯岡は、5月上旬、柔軟性があるというか、苦肉の策というか、「コース別の部員募集」を思いつく。画期的な部員獲得作戦だ。

これまで、部員は平日放課後などに練習し、週末は試合などをする。休日も揃って休むのが普通だ。

だが、この「コース別」は違う。生徒の目標設定によって、活動内容を変えていいですよ、と伝えるのだ。

画像提供=大阪府立枚方なぎさ高校野球部
部員募集・コース紹介のページ

例えば、主力選手として公式選出場を目指すコース(これまでの部員のイメージ)に加え、公式戦を目指すコース、技術向上と体力強化を目指すコースなど、全部で4つから選択可能なのだ。

それにより、練習時間が違ったり、休日の日数も違ったりする。生徒それぞれの目標が違うので、他の部との兼部も可能なコースがある。

こんな高校野球部は全国的に珍しいだろう。

「始めたばかりで、コース別の部員はまだいません。このシステムで広報活動をして1、2年生に声をかけていきます。来年度に向けても入口を広げて入りやすくしていきたい」

全国的に勝利至上主義の高校運動部内で指導者による暴力や暴言、部員間でのトラブルがなくならない。

磯岡の策は吉と出るか凶と出るか。

間口を広くして、新しい高校野球部の形をつくろうというユニークな試み。このスタイルはただ勝利を追い求める運動部に、部活のあるべき姿の一石を投じるかもしれない。

なぎさのインスタを見ると、みんな笑顔がはじけたいい表情をしている。入学直後は、人と話すときでさえずっとイヤホンをして自分を閉ざしている生徒、大人しくて自信もなく目も合わせられない生徒が、今ではミーティングで自分やチームメートへのダメ出しをするし、ゲーム中に仲間を鼓舞するようになる。「部活はほんとうに意義深い」と磯岡が言う。

ある2年生が入部した理由を教えてくれた。

「大冠(近隣の府立の強豪校)と迷ったんですが、こっちなら試合に出られると思って入学した」