逆に、東京や大都市圏から離れれば離れるほど家族の減少が著しい。特に、九州、四国、近畿の太平洋側と北海道、東北が顕著です。もっとも減少したのは鹿児島県です。

家族が減るのとは対照的に、単身世帯は爆発的に増え続けています。「夫婦と子」世帯と単身世帯との構成比差分を比較して、「夫婦と子」世帯のほうが上回る県は、2015年時点では、埼玉・奈良・岐阜・滋賀・群馬・富山の6県ありましたが、2020年にはゼロになりました。全都道府県において、単身世帯が「夫婦と子」世帯を上回ったことになります。

ソロ社会化というと、どうしても大都市だけの話だと勘違いしている方も多いのですが、実は地方も含めて全国的な傾向なのです。

「夫婦と子」の家族形態は将来消滅する?

これは当然の帰結で、「夫婦と子」世帯はやがて子が独立し、「夫婦のみ」世帯となり、やがて夫婦のどちらか一方で先に亡くなれば「ソロ」世帯へと変わります。ソロ世帯とは、未婚の若者とかつて家族だった高齢者によって作られていきます。

こうした状況は、確実に市場経済に大きな影響を与えます。かつて市場を支えてきたのは、まぎれもなく家族であり、主婦でした。食品も家電も日用品も主婦の支持が得られなければ商売にはなりませんでした。ところが、今までご説明してきたように、もはや家族からソロへと人口ボリュームは完全に移行します。今後は、ソロたちの支持がなければ立ちいかなくなることは明白でしょう。

ファミリーレスランも4人席を少なくし、一人専用席やカウンター席の充実化を図っています。かつて2人以上でなければ申し込めなかったパック旅行も「ソロ旅プラン」が増えています。コンビニの冷凍食品はほぼ一人用で占められています。クリスマスケーキでさえ一人用が人気です。近年、ソロ需要に対応する商品やサービスが急増しているのはそのためです。

では、このままいくと、昭和時代に中心を占めていた「夫婦と子」からなる家族という形態は、消滅してしまうのでしょうか?

そんなことはありません。未婚化が進んでも、夫婦になる人がいなくなるわけではないし、少子化といっても家族が産む子どもの数の比率は変わっていません。家族は消滅するのではなく、コミュニティの機能としての家族のありようが変わるのだと思います。