「もう限界だ」

夫婦で話すと、お金の話ばかりになって喧嘩も絶えなくなってきた。

通信費を抑えるため、離れた場所に住んでいる子ども夫婦や孫にもなるべく連絡をしないように気をつけるようになった。すべての生活費を切り詰めているが、もう限界かもしれない。

旧居では、毎月の修繕積立金の値上げも検討されているという。なんとか旧居を買い取ってもらえないか、不動産業者と交渉中だ。

それでもダメな場合、旧居を賃貸に出すか、あるいは、旧居に出戻ることも検討しなければならない状況だ。これから新居の不動産取得税の納税通知書も届くと思うが、このままではとうてい払えないだろうと、荒木夫婦はため息をつくのだった。

ただ穏やかな老後を過ごしたかっただけなのに

いままでコツコツと人生頑張ってきた。「つい棲家すみか」にするなら、古いより新しいマンションのほうがいいと考えた。

「でもこれなら、買い替えなどせず、思い出の詰まった古いマンションで穏やかに老いたほうが幸せだったのではないか……」と茂さんは言う。

人生の終焉しゅうえんに向けて、所有しているマンションとどう向き合うのが正解なのか。マンションにはいつまで住めるのか。維持費はいくらかかるのか。買い替えはどうすべきなのか。もっとよく勉強してから、行動すべきであった。

これからどうすべきか──と、茂さんは心底悩んでいる。

関連記事
年収1200万円超のタワマン住人が悲痛SOS…60歳再雇用の収入急減で「老後に1億円足りない」
1億円以上貯めた「地味な会社員」に直撃して気づいた彼らが共通して"やらないこと"3つ
賃貸と持ち家「5年で1200万円」の差…引っ越しが必要になっても"断然持ち家が有利"な理由
住宅・車・学費・買い物・スマホ…「5重ローン地獄」で月収の半分は返済に消える家庭に「6重の危機」到来
「ぴえん」を超えて「ぱおん」…首都圏に乱立する900棟のタワマンがこれから迎える相続地獄