内受容感覚が高い人は感情制御がうまい

内受容感覚が高い人は、自分の感情の制御がうまく、レジリエンスが高いことが示されています。自分の感情がよく分かっていると感情制御がよくできて、自分の感情とうまくつきあえるためです。そして、その感情は、上述のように身体に根差しているため、感情にうまく対処するには内受容感覚も優れていたほうが良く、この感情制御のうまさがレジリエンスにもつながるのでしょう。

内受容感覚に関する指標はさまざまなものがあります。例えば心拍数を、実際の心拍よりわずかにずらせて聴覚のフィードバックを与えた時に、どの程度の時間の遅れで気がつくかといった識別閾値をもって測定される内受容感度や、指定された時間内(1分など)の心拍数を、体に触ることなくカウントしてもらって測定される「内受容感覚の精度」などがあります。

実際の心拍と、自分でカウントした心拍数の差が小さければ小さいほど、内需要感覚が高いことになります。1分間の心拍数をカウントしてみることは、実際に体に触れて心拍を測ってくれる人がそばにいれば、比較的簡単に自分の内受容感覚の程度を知ることができます。具体的には[1-{(実際の心拍-自分で数えた心拍)/実際の心}]以下だと低い、となります。

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自分の感情がわからないアレキシサイミア

内受容感覚が、感情の識別に重要ということを述べましたが、一方で、「感情が認識できない」「自分の感情がわからない」という症状や特性を持つ人がいます。とくに、精神的ストレスから身体に不調を来した人では、自分の感情を説明することが難しかったり、自分の心の状態に鈍感であったりする傾向があり、こうした症状をアレキシサイミア(失感情症)といいます。これは、感情がなくなる、ということではなく、経験している感情を表現できないということです。アレキシサイミアでは、内受容感覚の正確さが低下しており、内受容感覚を処理している脳の場所(島皮質)の活動も低下していることもわかっています。