カレンダーをまき餌に票になりそうな顧客を物色

小規模局を中心に約1万9000人の局長でつくる全国郵便局長会(全特)の森山真・専務理事は2020年12月2日、各地の地方組織に宛てたメールでこう書いていた。

「郵便局利用者・支援者対策として、原則、訪問による『カレンダー』や自由民主の配布をお願いしている。12月の休日等を有効に活用し、確実に対応いただくよう、適切な指示、指導をお願いします」

「自由民主」とは、自由民主党の機関紙のこと。当時の菅義偉首相と二階俊博幹事長の顔写真入りで、「地域力UPに奮闘する郵便局」と題した特集を組んだ号外版。任意団体である全特は、カレンダーと自由民主をどれだけ配ったかを年明けに報告するよう各地方組織に要求していた。

約2900人の会員を擁する近畿地方郵便局長会が2020年にまとめた活動方針には、2022年の参院選に向け、支援者となりそうな顧客を郵便局内で探すよう求める指示が明確に記されていた。局内のロビーで顧客を物色するという文字どおりの「ロビー活動」により1週間に3世帯の支援者を獲得し、「会員1人80世帯以上」の支援者づくりを「絶対目標」に掲げていた。

Aランクは「絶対に選挙で名前を書いてくれる人」

近畿地方で局長たちが使わされたエクセルファイル「カレンダーお届け先リスト」は、支援者らの情報を管理するためのもので、タイトルはプルダウンで「支援者名簿」「後援会名簿」に切り替わる。相手の名前や住所、同居人と併せ、参院選の投票行動を予想してA~Cでランク付けする欄もある。Aの基準は「必ず投票に行き、氏名を書いてくれると確信を持てる人」。書いてもらう氏名とは、全特が参院選で擁立する組織内候補だ。

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郵便局を利用しただけの冒頭の女性も、こうした政治活動の「標的」になっていたのは間違いない。「C」ランクからスタートし、隙さえあれば候補者の後援会入会を持ちかけ、あわよくば投票も呼びかける狙いがあったとみられる。

このロビー活動で見過ごせない個人情報の問題については後編に譲るとして、今回はあえてカレンダーの疑惑に焦点を絞る。