日本の女子高校生にも起業家マインドを

米国でのWSLabの起ち上げから9年。堀江さんは、2022年3月に日本のあらゆる世代・属性の女性に向けたWomen’s Startup Lab Impact Foundation Japanの活動をスタートした。

「私は17歳で初めてアメリカに渡ったことで、価値観の多様性やさまざまな可能性を知りました。世界に飛び出せば、新しく見えてくるものがあり、大きなワクワクと可能性があります。また、イノベーションもそうです。世界もイノベーションも自分の可能性を最大に引き伸ばせる、おもしろいプラットフォームであり多くの女性や若い人々に知ってほしかった。それらを“起業”という視点で知ってほしいという思いから、Women’s Startup Lab Impact Foundation Japanを立ち上げました」

撮影=田子芙蓉

2019年に日本財団が行った世界9カ国の17〜19歳1000人を対象とした、第20回「国や社会に対する意識」に関する調査によると、“自分の行動で社会は変えられる”と回答した日本の若者は約20%ともっとも低い。一方、アメリカは約60%、インドでは約80%にも上る(図表1)。

出典=日本財団「18歳意識調査(2019)」より第20回テーマ「国や社会に対する意識(9カ国調査)」 

世界はイノベーションとともに国際化が進むが、日本はその逆をたどっている。ジェンダーギャップ指数は世界156カ国中120位、先進国では最下位(2021年)だ。そんな状況を打ち破るためにも、特に日本の若い女性たちの起業家マインドを養いたいと堀江さんは言う。

1世紀前の女性パイロットのような冒険心を持て!

Women’s Startup Lab Impact Foundation Japanの活動名は、「Amelias」(アメリアス)。約100年前に活躍したアメリカの女性パイロットの名前、「アメリア・イアハート」が由来だ。まだ女性の参政権がない時代に、女性初の大西洋単独横断飛行を成し遂げた(しかも世界初の大西洋単独横断に成功したチャールズ・リンドバーグに次ぐ快挙)。まさにCrazyの象徴のような存在。Ameliasでは、「Think Crazy, あなたの夢中が未来をつくる。」をコンセプトに、起業家マインドや起業前後の支援までを一貫して行う。

Crazyさがあれば起業に年齢は関係ない。しかしその一方では、早いうちから起業家マインドを植え付けることも有効だという。Ameliasでは次世代のリーダー育成のため、女子高校生向けの起業プログラムも実施する。

プログラムの多くは、まず従来の価値観を壊しマインドセットを変えることからスタート。次に画期的なアイデアをひねりだすトレーニング、そして最後にチームごとに分かれアイデアを基にデモンストレーションを行いおのおのが発表するなどと、段階的に分けられている。もし、発表内容に感銘を受けて企業や行政が協力したいと意思表示すれば、ハブとなってつなげるのもAmeliasの役目だ。プログラムは、日本の文化や風土に合わせ、本家アメリカ版をブラッシュアップさせた。

写真提供=WSLab
WSLabでは女性起業家支援プログラムを実施している。

Ameliasのプログラムには、リンクドイン社の最高テクノロジーオフィサーのジェフレッド・ファーン氏、グーグル社を経てオバマ政権で最高テクノロジーオフィサーとして変革を起こしたメーガン・スミス氏、日本からハルシオン創業者兼会長の久能祐子氏、グローバルベンチャーキャピタルファンドであるMパワーパートナーズのジェネラルパートナーであるキャシー松井氏など、そうそうたる面々が参加。

協賛に名を連ねているのは、日本のベンチャーが数多く集まる渋谷区や、ムーン・クリエイティブ・ラボ(三井物産海外子会社のベンチャースタジオ)などだ。