アイドルグループとファンの生態系に近い
筆者が相談を受けた構成員の親族の方々からは、「サタニストやトランプさんといった、特定のキーワードを含む言葉を浴びせかけてくる」「陰謀論がどうこう以前に、話の筋道が通っていない」「話せば話すほどキーワードの羅列になる」といった話を聞いている。構成員たちによるLINEのオープンチャットやTwitterを観察しても、ほぼキーワードだけの会話に終始している。
つくられた世界観に没入しすぎて現実感覚を失いやすかったり、論理的・多面的な思考が苦手で社会との関係に問題を抱えていたりする人々にとって、キーワードを拾えば世界の真実がわかるような感覚を与えてくれたのが神真都Qだった。この問題について、筆者は構成員の親族から貴重な証言を得ており、また稿を改めて紹介したいと思う。
神真都Qとはどのような集団なのかを考えるとき、一般的な陰謀論や過去のカルト集団の性格を基に考えてもうまくいかない。「エデンの村興し」がサティアンづくりに似ているとしても、オウム真理教のただの焼き直しでもない。
むしろ、俳優経験のあるイチベイを主役に据えた、観客参加型のエンターテインメント企画として神真都Qをとらえたほうがしっくりくる。陰謀論はイチベイのキャラ設定と、彼が立つステージの世界観。デモやワクチン接種の妨害といった集団での実力行使は、ファンが参加できる演出の一部。個人情報の収集や金銭欲は、アイドルグループの世界でよくある「運営の問題」ととらえればよい。ことあるごとに構成員の反応を気にしながら、「演出」を微調整する様子が垣間見えるところも、実に「芸能」的な感じがする。
この先どこまで行く気なのか
今どきの芸能界で使われる手法を、ここまで取り入れた陰謀論集団は、神真都Qが初めてではないだろうか。神真都Qの真の幹部がイチベイなのか、それとも元俳優の彼をステージに担ぎ上げた人物が別にいるのかどうかはまだわからないが、今のところこの新機軸は功を奏しているように見える。
だが、エンターテインメントとして構成員が楽しんでいるだけならともかく、神真都Qはちぐはぐな陰謀論を頼りに、「参加型」の実力行使で世界を変えようとする集団だ。彼らが活動をエスカレートさせた先に何があるのか、私たちはまだ知らない。