自治空間をつくる「エデンの村興し」計画

個人情報だけでなく、金銭への執着も強い。神真都Qの活動のなかで特に注目すべきは、設立直後に提唱された「エデンの村興し」と、計画実現のための集金活動だ。「エデンの村興し」とは、全国各地に取得した土地に構成員が移住して自治空間をつくる計画で、イチベイは自らのYouTubeチャンネルで、すでに土地の提供を受けて「エデン造り」が始まった場所があることを語り、さらなる計画進行のため資金提供を呼びかけている。

写真=iStock.com/FREDERICA ABAN
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個人情報に執着し会費を徴収するばかりか、土地取得のための資金集めまで行っている点から、筆者は神真都Qを営利目的の「集金型カルト」と見ていた。だが、この確信を揺るがせたのが、当初は地方都市から始まった、新型コロナワクチン接種会場への実力による妨害活動だった。その攻撃的な姿勢を維持したまま、ついに幹部自らが東京ドームの接種会場に乗り込む騒ぎを起こし、ついには冒頭のクリニックへの妨害活動で逮捕者を出して、警視庁公安部の家宅捜索を受けるまでに至った。自らの退路を断つかのような過激化は、集金型カルトにはそぐわない。

随所に感じる「ちぐはぐさ」

神真都Qのデモやイベントに公安部が張り付いていて様子が尋常ではなかったと、情報提供者から筆者に報告があったのは3月上旬だった。その1カ月以上前、反ワクチン派のコスプレイヤー男性が神真都Qのデモに便乗して騒動になったときも、現場には制服警官に加えて公安部の捜査官の姿があった。ターゲットの顔を記憶し、後ろ姿や多少変装した姿からでも人物を特定できるようにする「面割り」と呼ばれるマーク作業が、着々と進められていたのである。

大規模なデモを行うだけでも公安部は目を光らせる。実力行使の過激化だけでなく、1995年に地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の「サティアン」を思い出させる「エデンの村興し」を計画する神真都Qが、国家による監視や鎮圧を想定していなかったとすればお粗末すぎる。

中央集権的にきちんと組織化され、「一般社団法人神真都Qの会」として法人登録までしている神真都Qだが、実際の活動は思いつきに近く、肝心の陰謀論も既存の他の陰謀論やオカルト理論で聞いたことがあるような、突飛な話の寄せ集めでしかない。そうしたちぐはぐさが、神真都Qという集団を特徴づけている。ちぐはぐさに不満を抱いた層は神真都Qの結成直後に脱会しており、残った構成員は幹部と組織を称賛こそすれ、不満を抱いてはいないようだ。