構成員のボリュームゾーンは40~50代
ただしその構成員も、神真都Qの使命を本気で実現しようとする者と、組織をただ利用しようとする者に二分される。組織を利用しようとする者は自分のビジネスや講座などへの勧誘を目的としているケースが多いが、異性との出会いを求めてデモや集会に参加している例も男女を問わずある。
神真都Qの使命を本気で実現しようとする人々は、自己肯定できる居場所を求めて構成員になっているケースが多い。神真都Qの構成員のボリュームゾーンは40代から50代、次に多いのが60代以上の退職者世代だ。いずれも自分が社会から正当に評価されていないという不満を抱き、自分に見合った役割を求めてデモや実力行使に参加している。
神真都Qの構成員たちと接したことがある40代男性は、「高齢者ほど組織から期待されていることに喜びを感じ、中年以下の世代も活動を通して自分自身の存在意義を確かめているようだ」と筆者に語っていた。
陰謀論の「キーワード」だけを拾って読む
それにしても、自らの納得できない気持ちを整理できないからと、「悪い宇宙人」が登場する荒唐無稽な陰謀論を信じてしまえるものなのだろうか――。その疑問を解く鍵は、神真都Qが陰謀論を「エンターテインメント化」している実態のなかにあるかもしれない。
代表のイチベイは、着流しに和傘、白い帽子にスーツなど、いつも趣向を凝らしたスタイリングでデモの現場に登場する。すると構成員や彼らの子供から「イチベイさんがきたよ」「イチベイさんのところへ行きたい」と歓声が上がる。まさに、「会いに行けるアイドル」ならぬ「会いに行ける陰謀論カルト代表」だ。アイドルのファンが、そのアイドルに設定された世界観と一体化することに幸せを感じるように、神真都Qの構成員たちはイチベイが設定した世界観に没入することで幸福感を得、一方で現実への認知をゆがませていく。
イチベイが設定する世界観、つまり神真都Qの世界観は、陰謀論としての体裁を整えてはいるが、構成員にとっては壮大な物語というより、キーワードが散らばった空間に等しい。YouTubeやイベントでイチベイが語る陰謀論には、大和民族、サタニスト(悪魔主義者)、ピック(処刑のための拉致)、豆腐船(ピックした人物を拷問のうえ処刑して死体を処理する船。米海軍の宿泊鑑をそういう船だと見立てている)といった、特徴的なキーワードが登場する。
これらのキーワードを覚え、復唱するだけで、何かを知り何かを語った気になっている構成員が多い。文章のなかの読めない漢字や知らない単語を飛ばして読んで、にもかかわらず全体を理解した気になっているようなものだ。