アパート相続の悲しすぎる未来

この頃になると金融機関も頭を抱えだす。担保であったはずの土地建物。評価額が下がってしまうと、貸し付けた元本の回収ができるのかどうかという懸念が持ち上がっているだろう。

差し押さえたところで、やはりマーケットで売却できないならば、今度は金融機関が抱え込むよりほかに術がなくなる。「ぴえん」超えて「ぱおん」である。

不動産業者は涼しいものだ。もう売却してしまったし、運用での手数料なんてしれたものだ。すでにその後に建設したアパートの営業に忙しく、新築物件にテナントを連れて行ってしまうなんていう悪辣な行為もお手のものだ。

家賃保証も築10年から15年でのリフォームを自社に依頼することを前提にしているため、それができない場合には簡単にはずすことができるからだ。

結局相続した子供たちは親が残したパッとしないアパートと多額の借入金に悩まされ、潤沢に現金でも持っていない限り、せっかく親から譲り受けた土地を売却して返済するしかない。

売却できなければ自己破産が待っている。良かれと思って始めた不動産投資が刃になって戻ってくるのがアパート相続対策の悲しい未来だ。

写真=iStock.com/kate_sept2004
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「売り時を失ってしまう」タワマン節税の罠

タワマン節税もそんなにバラ色な未来が待っているわけではない。タワマン節税が本当にハッピーエンディングを迎えるためには、タワマンがこれからの未来どこまで価格を維持、値上げできるのかにかかっているからだ。

すでに首都圏ではタワマンが900棟以上林立している。初めのころこそレアものだった超高層からの眺めも、たとえば豊洲エリアではすでに、せっかく眺望を買ったと言ってもよい高層階からの眺めも眼前に立ちはだかった別のタワマンに塞がれてしまい、窓の外には他人の家、などという状態になっているマンションが多くなっている。

マンションは新しさが命。続々建ちあがるタワマンの賞味期限は、未来において意外に短いのかもしれない。

本来の不動産投資をやっているのであれば、目の前に他物件が建ちそうだ、家賃はそろそろピークアウトしそうだ、ライバル物件が増えて価値が下がりそうだ、と判断して、その心配が現実化する前に売り抜けることができる。

ところが相続対策が厄介なのは親が亡くなってくれないと、ミッションがコンプリートされないところにある。これでは売り時を失ってしまうのだ。