その後の顚末てんまつは、前述の通り。冷静に考えれば誰のせいでもないのだが、榊はすべて自分の責任だと落ち込み、一度はうつ状態に陥った。葛粉の問屋に感謝されたことでなんとか気持ちが切り替わり、「次に同じようなことがあったら、みんなで笑えるようにしよう」と奮起する。

アイスだけには頼れない…次の狙いは「いちご大福」

2500件の注文をさばき終えるのに、3カ月。世の中は夏になり、葛きゃんでぃは「をかの」の稼ぎ頭になっていた。しかし、涼しくなればアイスの売り上げは落ちる。榊は「次のヒット商品を作ろう」と試行錯誤を繰り返したものの、なかなか納得できるものができない。

そうこうしているうちに秋が終わり、冬がきた。冬といえば、「をかの」の主力商品、いちご大福の季節。そこで、榊は考えた。前回は、3日間で200件の注文が入って満足してしまった。でも、振り返ってみれば、購入してくれた人たちは自分の親しい人たちやインスタのフォロワーで、コロナが最初に直撃した時期だったから、応援の意味もあっての注文だったはず。今回はちゃんと売らなきゃ。

そこで、まずはいちご大福の包装やパッケージのデザインを変えた。それから、ネットでの発信に力を入れた。音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」が日本でも話題になっていた時期で、榊は著名人が集まるルームで発言したり、自ら異業種交流の場としてルームを開きながら、「をかの」といちご大福を積極的にアピールした。

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包装のデザインを一新したいちご大福

これで、ネットショップの売り上げはグッと伸びた。しかし、店の客は相変わらず、常連さんがほとんど。その様子を見て、「お店もなんとかしよう」と、手書きのビラを作り、店のスタッフとふたりでポスティングを始めた。

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いちご大福。ピンと張った糸を下ろしていくと…
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いちご大福は柔らかく、あっという間に半分に
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いちご大福の売り上げはグッと伸びた

榊によると、チラシの効果は限定的。1000枚配っても、それでお店に足を運ぶ人は3人弱だという。しかし、その3人は貴重な存在だ。一度食べておいしいと感じれば、周りの人たちに伝えてくれる。ひとりがふたりを呼び、ふたりが4人を連れてきて、という波が起きて、春ごろから店頭での売り上げも急速に伸び始めた。

「いちご大福はもともと人気があったんですけど、ほかのフルーツ大福はぜんぜん。ぶどう大福なんて、10個出しても1個しか売れない日もあるくらいだったんです。それでロスになるのが怖かったので土日だけの販売に絞ったんですけど、1日100個も売れるようになったんです」