かつての大衆車が、いまや高級自動車になっている

経済成長はやめたほうがいい、脱成長ということが最近、年長世代の論客のみならず、若いオピニオンリーダーからもよく言われています。脱成長、脱資本主義は大人気です。「経済成長するべきだ」論はどうも論壇では旗色が悪いままです。あまりに現実的すぎて、夢がなく見えるのでしょうか。

しかし現実には、多くの国が経済成長を続けていますし、国民の可処分所得も伸びています。今後もそうでしょう。日本の場合は経済成長は極めて低調で1%以下で推移していて、実質賃金も横ばいか実質的に減少しています。

そのことから現役世代にとって、他国における標準的な商品が、日本にとっては高額品になる現象が生じています。

たとえば、かつて300万円くらいだったドイツ車のフォルクスワーゲン(VW)のゴルフは、いまは400万円以上になっています。それでも販売している国の多くでは、給料が伸びているので中流世帯が買える車であり続けています。ところが日本においては給料の額面が伸びていませんから、単に上昇シフトして高額商品になってしまいました。

これがいろいろなところで起きています。自動車が最たる例だと思うんですね。かつての大衆車がいまや高級自動車になっている。トヨタのカムリや、ホンダのアコードどころか、シビックですらそうですね。

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経済的不自由さは閉塞感につながる

それから世界屈指の人口と経済成長を背景に中間層の購買力が高まり、爆買いだと言って物を買いまくっている国がお隣にある。しかもコロナ前までは、日本で買いまくっていた(笑)。日本人がそれだけ物を買いまくれるかというとそうでもない。いずれにせよ、感覚的にも経済的不自由を感じますよね。それもまた閉塞感につながると思います。

それからもう一つは将来の先行きの見通しと関係しています。

ゆるやかなインフレが起きている社会では、自然と上げ潮的な経済観です。これは工場などでは人は勝手に習熟し、生産性が勝手に2%ぐらい改善していき、それに応じて物価と賃金も上がっていくといい、という考え方です。

この場合、物価の伸びをやや上回る水準で賃金が伸びていくことが重要です。物価の伸びをやや上回る水準で賃金の伸びが生じている社会がどういう社会かというと、借金することが好ましい社会です。企業の場合、投資と言い換えることができます。額面上の賃金が伸びていくことがわかっていれば、いま借金することが得ですよね。額面は変わらないわけですから、将来の実質的な借金額が小さくなるからです。