しかし、しかしだ。

50代でも前職より高くなった(5~20%以上上昇)人が、35.4%もいた。50代=もらいすぎと批判されがちだが、その常識を覆す結果だともいえる。

「どこにいたか」より「何をしてきたか」

さて、ここからが、ミドルエイジ会社員たちの心の動きが垣間見える結果だ。

「転職先にアピールした点」を尋ねたところ、もっとも多かったのは「これまでの業務実績」で、年齢が高いほどその傾向が強く、45歳以上では75%超。「専門的な知識やスキル」「資格を持っていること」が続いた。「前職の勤務先名」を挙げた人は、30代では5%だったのに対し、40歳以上では10%を超え、50代は13.8%ともっとも多かった。

では、採用側はそれをどう評価したか?

参考になるのが、転職者に「採用選考でもっとも評価されたと思う点」を挙げてもらった回答である。

なんと、40代後半から50代の人の半数近くが「これまでの業務実績」を挙げ、「資格」(50代4.6%)、「専門的なスキル」(50代12.2%)を大きく上回っていた。

自己アピールをする際に、40歳以上では実に10人に1人以上が、「前職の勤務先名」をアピールしていたのに対し、「採用選考で評価された」としたのは、50代ではたった1.3%しかいなかった。つまり、「どこにいたか?」ではなく、「何をしてきたか?」が評価されていたのだ。

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むろん、前職が有名な大企業であるほど「使いづらい」「肩たたきに遭っているんじゃないか」と、否定的に捉えられる可能性はあるだろう。

資格や専門的なスキルは、いわば「足の裏の米粒」のようなもの。取らなきゃ気になるけど、取ったからといって腹を満たすものではない。「今までの働きぶり」が次につながっていくのであり、キャリアは連鎖しているのだ。「今、この瞬間」にどれだけ正しい行いをするかで、10年後、いや、20年後が決まるのである。

会社を捨てても、経験は残る

もちろん、転職すればいいというものではない。しかし、何かを失うことなしに前に進むことはできない。

会社を捨てても、「私」の財産=暗黙知は残り続ける。地面を踏み締めた感覚、這いつくばった経験は、新しい環境で生かすことができる。失う、という苦い経験も、数年後には財産になる。

まだ50歳だ。「五十や六十で迷ったりしちゃいけない」のだ。70歳まで働いたとして、あと20年もある。50歳に至るまでの20年という時間を振り返れば、それがいかに長く、いかに賑やかで、いかに成長のために貴重な時間だったかを思い出せるはずだ。

その大切な時間を、「選択肢がないから離れない」と考えるのは、自分の心の自由まで会社に捧げることに等しい。つまるところ、「プランB」を持てないことが、会社員の最大の問題といえる。彼らは自分の存在意義を、会社という顔の見えない組織に埋没させている。それが最大の問題であることに、当人たちは気づいていない。

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