今の中学受験塾は教えることが多すぎる

ならば、中学受験塾が良いのかといえば、残念ながらそうとは言えない。冒頭の質問で親が不安視するように、中学受験の勉強が詰め込み学習に陥りやすいのは事実だ。一般的に中学受験をするのなら、大手進学塾に通う。大手進学塾では、受験に必要なカリキュラムが充実しているからだ。毎年入試が終われば、即座に入試問題を研究し、翌年のカリキュラムに組み込んでいく。そうやって、徹底的な受験対策をして結果を出してきた。

しかし、塾が入試問題を熱心に研究すればするほど、覚えなければならない知識、教えなければならない解法が増えていく。長年、中学受験の指導をしてきた私から見ると、今の中学受験塾は教えることが多すぎる。あまりにもたくさん覚えなければならない知識があるので、子供たちはそれをこなすだけの勉強になっている。それが、今の中学受験の一番の問題点だ。

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「最上位クラス」以外は詰め込み型の勉強になってしまう

だが、最上位クラスに限っては、非常に良い授業が行われている。優秀層が集まるクラスは、すでにある程度の知識が備わっている。そのため、6年生の夏以降は、塾のテキストはほとんど使わず、難関校の過去問や類似問題を解かせ、試行錯誤する力を身につけることに力を入れる。いろいろな問題を使って、思考力を鍛えているのだ。しかし、それができるのは、塾全体からすればごく一部の最上位クラスだけ。上中位クラスでは、知識を詰め込ませてなんとか合格させる授業になってしまう。

それが、冒頭の質問にもあった「小学生の子供に丸暗記・大量学習させる中学受験」を指す。下位クラスにおいては、一応塾のカリキュラムに添って指導はするけれど、理解できているかどうかまでは確認せず、ほぼ放ったらかし状態だ。また、大手進学塾でも塾によっては、最上位クラスでも思考型の問題をパターンで叩き込ませるところもある。そういうやり方で勉強をしてきた子は、中学受験では志望校に合格できるかもしれないが、思考力は伸びていかない。